ゆっくりしゃがんで、名前の顔をもう一度じっと見た。
頬に、泣いた跡。
「名前、ただいま」
お前の大好きなベル王子が帰ってきたぜ。
だからさ、
目、開けてくれよ。
「昨日の夜中、一人にしてくれって言ってなぁ」
先輩の話によれば、名前は、か細い声で、ずっと俺の名前を呼んでいたらしい。
ベル、
ベル、
べ、ル…ッ
会いたいよぅ、
あたし、死んじゃうよぅ……
たすけて、
ベル……――――
じゃあなんで意地張って連絡寄越さなかったんだよ。
俺だって会いたかったよ。
名前に、
おかえりって、言ってほしかったよ。
名前の身体をそっと抱き上げて、俺がソファーに座る。名前は膝の上に、ソファーと並行になるようにして抱きしめた。
冷たい、動かない身体。
死後硬直のせいか、石のように動かない。
そっと、王子は膝枕にしてやった。
《ベルのお膝、ほっそいよねー。なのにあったかい》
名前のはやらかくて寝心地抜群だよな、って言ったらふにゃっとした笑い方したんだっけ。
名前、目開けて。
王子の一生のお願い。
俺の名前呼んで。
ベルじゃなくて、ベルフェゴールって。
ちゃんと呼んでみろって。
本名長いからやだとか言いやがって、こンの生意気姫。
なぁ名前、
ベルすきって、言ってみろって。
「名前、」
ちゃんと返事すっからさ。
「王子も、名前のこと、だーいすき。」
な?
拝啓、もうここにいないお前へ
(ちゃんと、聞こえた?)
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bkm