モンモンキャンディー、とやらを手に入れられれば、ダメダメなオレでも名前を救えるのかも。

そんな少しの希望から、ツナは魔法使いことリボじいと共にモンモンキャンディーと呼ばれる
パワーアップアイテムを手に入れることに決め、山を越え川を越え、必死に旅をしていたのだ。




ツナが頑張っている時、隣村では。





「………、」

「いつまで座ってるつもり?ほら、立ちなよ」


恐怖のあまり座り込んでしまった名前に、その少年は手を差し伸べていた。

拍子抜けしてしまった名前は、ぼんやり、彼をみつめるだけだった。
痺れを切らした少年は、無理矢理名前の腕を掴み、立たせた。

びっくりして目を見開き、その強引さに更に恐怖を覚えた名前は、少年の腕を振り払い、走り出した。

「(…………っ、怖い、怖い… たすけて、ツナくん…!)」


名前の瞳にはうっすらと涙が浮かぶ。

どうして危険と分かっていて近付いたのか。
先生はちゃんと止めてくれたのに、何をしているんだ。


後悔の念と、恐怖と、だんだん息切れして動かなくなる足。

気が付けば、名前は立ち止まって、ぼろぼろと涙をこぼしていた。

やだ、このままじゃ、


「ねぇ、泣いてるの」


途端に背後から聞こえた声。
先ほど聞いた、少年の声。

がちがちと震える身体。瞬きすることを忘れた瞳。



―………ふわり。



視界に映るは、漆黒。

しばらくしてそれが離されて、少年が自分の前に回りこんでいることをなんとなく知る。

どうやら、少年はその身に付けた漆黒のマントで、名前の涙を拭ってくれたらしい。


「……僕が、怖いの?」


もうどうすることも出来ず、ありのままにこくんと頷くと、
少年は想像出来ないような寂しい笑顔を見せた。

「僕はね、弱くて群れるしか脳の無い人間が嫌いなんだ。
だから、気に入らない奴は吸い殺すし、村も襲うよ。
だけど、なんか、」


少年は、俯くと、ぼそり、聞こえるか聞こえないかの境目の音量で呟いた。


「君は、殺す気になれないんだ。

どうしてかな、君が泣いたのを見たら、このへんが疼くんだ」

少年は、心臓があるだろう位置の服をぎゅうっと握り締めた。


「僕の名前はヒバリ。ふざけた奴らが『吸血ヒバリン』なんて言ってるけど、
本当の名前はヒバリ」

そして、少年ことヒバリは、そっと再び手を差し出して、


「君とは、人間で言う『トモダチ』に、なってみたい」

そう、言ったのだ。



名前は、赤く腫らした目で、しっかりとヒバリを視界に映し、

そしてにこりと笑って、


「怖いなんて言って、ごめんなさい。
あたしも、あなたと友達になりたいな」


彼の手を取った。

その可愛らしい微笑みに、少年は赤面する。


二人は、怪物づかいことツナがやって来るであろう少し開けたところまで、
並んで歩いて行くことにした。


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bkm
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