頭痛がするの。

暗闇での恐怖が甦るの。

もう暴力には関わりたくない。


そう、心に決めた矢先の出来事。


気に入られるなんて、冗談じゃない。



だってあたしは、あなたが嫌いだから。



02:誰か、助けて



あの最強風紀委員長様に軽く逆らってから、一日が過ぎた。

この辺の地域をシメてるらしいし、昨日の今日で怖いけど、学校に行かないわけにもいかないし。
どちらにしろ病院に行かなきゃだから、外に出ることは免れない。

嫌だなぁ………。





(基本何があっても学校には行くけれど、さすがにあの時は行けなかったな…。)

一人回想して、

制服に身を包む。



鞄と診察券その他が入ったポーチを持って、家を出る。
朝ご飯はさっき済ませたしね。







病院に入れば、独特の薬の匂いがして、これがあたしの普通なんだと思ったら、ちょっとさみしくなる。
体育もまともに出られないしなぁ。

皆と同じになることは、あたしには出来ない。
生まれ持ったこの体を憎んだことだって、
何度あったことか。

その度にごめんねと謝るお母さんを思い出して、一人唇を噛み締めたのも今思えばちょっと懐かしい。



とにかく、最近は調子もいいので、もしかしたら治るかもという見込みもあるから、それに縋るしかない。
頑張れ、あたし。



診察を受け、いつもののど飴をもらってから病院を出て、学校に向かう。
時計も見たけど、今日は遅刻の心配はなさそうだ。

よかった。




「あ、羽無ちゃんおはよー」

「今日ものど大丈夫?」

こくりとうなずいて、手を振る。
中学では優しい友達に恵まれて幸せだ。


「あ、羽無おはよー!先生、どうだって?」

【いつもどおりだよ、京子は心配性だなー】

「だってー…」

「まぁたしかに言えてるわね。
おはよ、羽無」

【おはよ、花】


幼馴染みの京子と、中学に入ってから仲良くなった花に挨拶を済ませて、教室へ。
自分の席に着けば、最近よく目立ってるツナくんが目に入る。

前も目立ってた気がするけど、最近の彼はまた違う意味で目立ってると思う。
なんか、元気になったよね。


「お、南じゃん。はよーっ」

【山本くん、おはよ。獄寺くんとツナくんも、おはよー】

「あ、おはよう、南…」

「おー。ってか、オレはまだしも10代目が も ってなんだよ!」

【元気だねー】


席の近いこの三人とも、最近ちょっと仲良くなれたと思う。
獄寺くんも、最初は怖かったけど、今は彼の面白いとこもちょくちょく見れて嬉しい。



チャイムが鳴って、皆が一斉に席に着く。
一時限目、体育かぁ…やだなぁ…。

朝のHRが終わったあと、のど飴をひとつ口に放り込んで、京子たちと更衣室に向かった。

走るの嫌いなんだよなー、汗かくのも、むしろ運動がやだなー。
最近のあたし、気持ちどころか体もたるみきってる感がバリバリだ。
ついこないだまで、夏休みだったからかな…。


そんなあたしの脳は、昨日のことなんて隅に追いやっていた。




そのころ。



「草壁、今日は委員会の部屋割りの件で会議があったよね」

「はい、昼休みに、会議室で」

「各委員会、代表は一人ずつってちゃんと伝わってる?」

「はい、先週教師から全委員会に伝わっているかと」

「わかった。もういいよ」

「は。失礼します」


並中風紀委員長雲雀恭弥。
彼は、応接室の窓からグラウンドを眺めていた。
彼の視線の先には、昨日目をつけたばかりの獲物が。

名を、南羽無。

昨日見たのとは違う髪形に、体操着姿。
下にはジャージを履いていることから、体育なのだろう。

彼女の違う一面を見れたことに、彼の視線はさらに興味の色を帯びる。


「今日はどうやって呼び出そうかな…」

楽しそうに一言、それで雲雀は窓から離れ、自分の仕事に取り掛かった。

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