小さい子って、なんだか邪険にできないでしょ?
あたしが女の子だから、母性本能がうんたらかんたらっていうのも
あるのかもしれないけれど、

だって、

だって、



なんとなく、なんとなくだよ?



とっても、身近に感じるんだもの!!

童顔のせいじゃないかって?
それは言わないお約束です!




08:王子の君と、牛柄の君と、中華なあなた




休み時間。

最近では珍しくもないツナくんのため息が、
今日はなんとなくいつもより盛大な気がして、
何かあったの?と聞いてみた。

「昨日、ウチに新しい居候が増えちゃってさ…」

【い、居候なんているの!?】

「うん…まぁ、ね…」

詳しく話を聞けば、その子は居候の中でも年長者のほうで、
あ、でもビアンキもいるから2番目かな?とか言ってて、
その子がやけにさっきから学校に出没していて、
その子は何故か自分に懐いてしまっていて、
どうしようもなく頭を抱えている、ということだった。

【ね、ツナくん、あたし、今日遊びに行ってもいいかな?】

「え!?南が!!?」

【うん。こう見えてあたし、子供好きなんだ】

「(こう見えても何も本人見た目子供っぽいからな…)」

ん?遠回しに今童顔なところ指摘したかな?ん?

心が読めるわけじゃないよ、だってまじまじと人の顔見て来るんだもん。
そりゃ嫌でも分かりますよははは。

「いいよ、オレも一人じゃあいつら抑えきれないし…5歳児2人も無理だって!」

【わー、ホントにいっぱいいるんだねーツナくんち】

今聞いた時点で3人は居るよね。あれ?4人か?

学校が終わった後そのままお邪魔させていただくことにして、
そこであたしは雲雀サンの呼び出しを食らったのでした。





うーん、子供かぁ。
正直自分イタリアの血もあるからそこまで童顔ひどくないと思うんだけどな。
小学生に間違われたことは今のところないし…
あ、だからってそれ以下に間違われたことも勿論ないですよ?
もう、皆皆童顔童顔ってひどいよね!コンプレックスなのにさ!

というわけで、童顔って言われるのは嫌いですが、子供自体は好きなんですよ、ホントに。



「…で、僕にそれ言ってどうする気だい?」

【別にどうもしませんよ。なんかむしゃくしゃしたんでお話させていただきました】

「僕は別に君のストレス解消してあげるために呼び出したんじゃ…
あ、僕がストレスを解消するための相手としては最適だけどね」

【お断りさせていただきます】

「却下。…ねぇ、コーヒー飲みたい」

応接室。
あのあと呼びだされたかと思ったら、さっきからお茶(コーヒー)淹れてばかりなんだけど。
まだパシりも無いし、終わった資料まとめる手伝いぐらいしか仕事って仕事してない。

【雲雀サン、あたし仕事ないなら授業に戻りたいんですが…】

「ダメ。君コーヒー淹れるの上手いから」

【え、ちょっと、それって新手の意地悪ですかね】

「君成績良いんだからいいじゃない。少しくらいサボったって」

知ってます?雲雀サン、いくら成績良くったって授業出なかったら関心意欲態度Cついちゃうんですよ?
それでなくとも今行われているであろう授業は音楽なんですよ?成績悪い科目ですよ?
ちなみに次の科目は体育という実技科目の中でも最高を誇るあたしの苦手科目なんですよ?
卒業できなかったらどうしてくれるんです?泣きますよ?いやあたしの両親が泣くんでそれだけはやめてください。

いやー、ちょっともしない間にこんだけ彼に文句つけれる自分を褒めたい。誰か褒めて。
度胸だけはなんかいろいろ養われるからね、この人の近くにいると。


「はい、これ、全部見終わったやつだから。職員室に届けて。
そしたら教室戻っていいから」

ありゃ。いつの間にか彼はお仕事終わらせてコーヒー飲んでいらっしゃる。

おかわりの最後の一杯を淹れて差し上げてから、
あたしは今日は放課後予定あるので失礼します、と告げて、
頼まれた紙束(これ全部で何枚あんだろ…久しぶりに3桁いくかな)を
手に取り、応接室を後にした。




「母さん、ただいまー。今日は…て、いないし」

ツナくん宅にお邪魔しています、羽無です。
お母さんはご不在の様子。本当に来てよかったのかな、と
彼に聞いてみれば、「少ししたらきっと戻ってくるよ、大丈夫」って言ってくれた。
ツナくんって、ダメツナとか言われてるけど、心はとっても広い。
優しくて、いい人。そんな人のお家に居候なんて、幸せ者だなぁ。


階段を上ってツナくんのお部屋に到着。
「散らかっててごめんね、」とツナくん。
確かに片付けとか苦手そうだけどね。

「ただいまー、リボーン、今日は南来てるんだ…って、フゥ太!」

「おかえり、ツナ兄」

ツナくんがびっくりした目で見る先には、小学生くらいの男の子。
彼らの会話を聞くと、どうやら困っている男の子とはこの子のことか。
へぇ、フゥ太くんね。よし、覚えたぞ。

可愛らしい笑顔を見せる彼は、あたしの存在に気付いて、
「ツナ兄、そのひと誰?」と聞く。
「オレのクラスメイトで南羽無っていうんだ」、とツナくん。

「ちゃおっす、羽無」

【こんにちは、リボーンくん。あれ、リボーンくんも居候?】

「そうだぞ。居候っていうか、住み込みでツナの家庭教師だ」

【へぇ、家庭教師!すごいねっ】

出会ったばかりのあの日は、挨拶がてら拳銃を向けられたので、
かなり印象深く覚えている。
そんな彼がツナくんの家庭教師だとしても、特に疑問を持たないあたしは、
多分雲雀サンの近くにいることで、そういうハプニング的なものに慣れてしまったのだろう。
あまり疑問どころか違和感を抱かない自分は余程だと思う。

「はじめまして羽無姉。僕フゥ太、よろしくね」

【よろしくね、フゥ太くん】

丁寧に挨拶をしてくれるフゥ太くん。はにかんだ笑顔が可愛い。

「ねぇ羽無姉、どうして筆談なの?」

「羽無は喉が生まれつき弱くて、声が出せないから筆談なんだぞ」

【え、え、どうしてリボーンくん知ってるの?】

「マフィアの情報網は甘く見ないほうがいいぞ」

ニヒルな笑みを浮かべる赤ちゃん、もといリボーンくん。
ま、マフィア?あの、物騒なやつでしょ?
拳銃も持ってるし、納得いかないわけではないけれど…。


そこに、ドカドカと忙しない足音が響いてきて、「邪魔するぜ、」と金髪の男の人と
他数十名の男の人たちが部屋に入ってきた。
あれ、この金髪の人って………、

「あ、こないだ病院で…」

やっぱり。軽く会釈をしておく。
「よ、ツナ」という彼は、ツナくんの知り合いの様子。
あとで誰なのか聞いてみようかな、

「ランキングフゥ太、ランキングデータを売って欲しいんだ」

え、なにそれ。ちょっと待って、ストップ。
話についていけない。ランキングを、売る?
あたしの常識には無い日本語です。あれ、ランキングって売れるものだっけ?

「フゥ太のランキングは百発百中なんだぞ。それゆえに価値が高けぇ」

【へ、へぇ、そうなんだ……】

苦笑いでリボーンくんからの解説を聞いていると、すでに用を済ませたらしく、
彼らはまたドカドカと部屋を出て行ってしまった。



【じゃあ、今のディーノさん、も、リボーンくんが家庭教師をしてたんだ?】

「あぁ、そうだぞ。あいつは今キャバッローネファミリーの10代目ボスだ」

一通り彼らの説明を受けた後、リボーンくんやっぱり大物だな、と感じた。

せっかくだから、ツナもランキングしてもらったらどうだ、と言うリボーンくん。
すると、何故かフゥ太くんはあたしの方に寄ってきて、「うん、いいよ」と言った。

「羽無姉のもランキングしてあげようか?」

【え、いいの?】

「うん!レディーファーストで、羽無姉が先ね!」

フゥ太くん、もうそんな言葉知ってるのか。
彼もイタリア出身だ、と聞いたが、何気に紳士だ。この子将来有望だ。

何がいい?と言って見上げてくるフゥ太くん。
うーん、可愛いなぁ。

じゃあ、と言った瞬間、

「面白そうですー!ハルも混ぜてください!」

と、一人の女の子がひょっこりと、姿を現した。











途中乱入してきた女の子は、三浦ハルというらしい。
簡単な自己紹介をすると、彼女は「ハルはハルでいいですよー!」と
明るい笑顔を見せてくれた。

まぁ、そこに至るまでに多少時間を有したが。

「はひー!つ、ツナさんその方は!!?
ま、ままままさかツナさんのガールフレンド!!?
ハルの心は今非常にブロークンですよ!」

「落ち着けってハル!違うから!フツーにクラスメイトだから!」

【南羽無っていいます】

「そ、そうなんですか…可愛らしい方だったので、つい勘違いを…
あ、ハルは三浦ハルっていいます、よろしくお願いしますね!」



……と、こんな感じだ。


ハルがフゥ太くんに「自分のチャームポイントを当ててみて」というと、
フゥ太くんは一度あたしのほうを見て、それから「いいよ、」と返事をした。

ふわり、周りにあったものが宙に浮く。
何これ、どういう仕組み!?

あたしが呆気にとられていると、フゥ太くんは

「ハルさんのチャームポイントランキング、全8パーツ中の
第一位は……つむじだね」

「な、何で知ってるんですかー!?」

見事、ハルの課題をクリアしていた。


それからフゥ太くんは皆のランキングを次々と言い当てていく。
すごーい、本当に百発百中なんだ!

小さい子が宙に浮いているのに気付くと、リボーンくんが、
弁髪の子がイーピンちゃん、牛柄の子がランボくんだと教えてくれた。


フゥ太くんがランボくんのランキングを言い当てると、玄関が開く音がして、
獄寺くんと山本くんが階段を上ってきた。

「お、南も来てたのな!」

【あ、うん】


ふと、窓の外を見やると、ぽつり、雨が降ってきていた。

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