頭痛が、する。


頭を抱えて、うーうー唸っていると、同じくビリを走っていたツナくんに「南、大丈夫?」と心配された。

男女で持久走とか、ありえない…。

まず体力の無いあたしは、ビリ必須。
続いて言っちゃ悪いけど同じくツナくんこと『ダメツナ』はもちろんビリ。

あたしたちは男子のビリと女子のビリで、仲良く皆の一番後ろをゆっくり走っていたわけだ。


なんとか二人で声を掛け合い(声を掛けたのはツナくんだけだけど)、ようやく必死の思いでゴールインしたのだが、さっきの頭痛はひどく悪化していて、軽く発熱もしていた。

季節の変わりめは体調を崩しやすい。
自分がその典型的なタイプの人間だったの、すっかり忘れてた…。



京子と花に肩を貸してもらって、保健室へと行く。
ベッドで横になり、二時限目は休むと伝えると、二人は教室へと帰っていった。



少し楽になったあたしは、三時限目の前に制服に着替えて、
教室に行こうとしていた。


していた、のに。


『南、南羽無!!
今すぐに職員室へ来るように!
繰り返す、1年A組南羽無、
至急職員室へ来るように!』

焦った教師の声がマイクを通して、おそらく全校へと届く。


あたし、何かしたかな…(泣)


とぼとぼと職員室へと出向けば、風紀委員に入るように、って先生から言われて、腕章持たされて、もう決まったから細かいことは言うなってなんか肩に手を置かれて、同情染みた目を向けられた。

え? 話終わり?
てかあたし現在進行形でやばくない?


もう決まったって、


えぇぇー……。







もうヤケになって、ついでに分厚くて重たい資料も持たされて、(プリントを約500枚)資料のてっぺんに持たされた腕章のせて、応接室着いてから付けよう…なんて心で呟いて、先生数人に見送られて、職員室を出ました。




もうやだ。
腕痛い。
頭痛い。
超絶眠い。
さっきまで保健室にいたんだぞ?
ふざけるなよ、委員長様。

あたしに自由を返せ─────っ!!!!!!





ノックが出来ない。
声も出ない。
こういうとき、不便。

応接室の入り口で不機嫌オーラ全開にしてたら、


「なにしてんの、入りなよ」


って委員長様が開けてくれた。
あたしの手もと見て、納得したらしく「あぁ、入れなかったのか」と嫌味らしく言われた。

腹立つなぁ、もう!


「ここにそれ、置いて」


おそらく委員長様専用のものと思われる机に、持って来た資料を置く。
てっぺんにのってた腕章をとって、どうやって付けようか迷っていたら、


「貸して。付けるから」


って、ひったくられた。


でも委員長様は、安全ピンを持ってきて、あたしの左腕をとり、皮膚に刺さらないように気をつけながら、ちゃんと付けてくれた。
腕章が曲がってないか、とれることは無いか、細かいところまできちんとやってくれた。
意外と几帳面、なのかも。


委員長様はあたしに腕章を付け終えると、自分の席へと戻っていった。

しばらくはあたしが持ってきた資料を読んでいて、途中あくびしてみたりと、けっこうほのぼのした時間が過ぎていた。


しばらくして、自分のやることを何も知らされていないのに気づき、彼の前に立って、肩をつついてみると、


「なに」


無愛想ながら、返事がかえってきた。


【あたしはなんの仕事をすればいいんですか】

「…………、あぁ、そういえばまだだったね」

「……………」

「君は、主に僕と一緒に情報処理をしてもらう。体力的なことは苦手なの知ってるし、君は情報処理能力に長けてる」

【あたし、風紀委員の仕事なんて何一つ知りませんよ?】

「後々教えていくよ。それと、


昨日の、あの嫌がりようは何だったわけ?」





体が硬直。
ただでさえ触れてほしくなかった話題に、単刀直入に振られて、

もうなんか、泣けてくる。


【あたしは、暴力が嫌いなんです。
だから、群れを…狩る?雲雀サンも、不良の集まりだって聞いてた風紀委員会も、本当なら嫌いだから、関わりたくないんです。
だけど、決まっちゃったことにうじうじ言うのはあんまり好きじゃないので、ちゃんと仕事することにしたんです】

「ふーん。じゃぁ君は現在進行形で僕のことも、この委員会も嫌いなんだ」

【はっきり言って大っ嫌いです】

「…あっそ。わかったよ。
……なるべく力を使う場には、君を連れて行かないようにするよ」

【ありがとう、ございます…】


ホントなら、今すぐにでも退会させてほしいくらいなんだけど、自分に力が向くのはもっと嫌だから、我慢しておく。

ふと委員長様は時計を見上げて、「そろそろ時間だね」と呟いた。


「僕はこのあと会議室でちょっとした会議があるから、君はこの資料コピーしておいて」

「…………………!!!!!!」


な、これって…

全部さっきあたしが持ってきた資料なんじゃ…!


パシられている感が拭えないなか、あたしは何ともいえない感情を押し殺して委員長様を見送った。
そのあと指示された資料を持って応接室を出た。

え?情報処理係じゃなくって、委員長様専用パシリなんじゃないかって?



………………………自覚したくないので、触れないでください(泣)



あぁ、もう、


誰か、助けて。


あたしに、暴力と風紀委員と委員長様からかけ離れた今までの平和な日常を、


返してください。


next.


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