初めてなんだ。こんなこと(速加)
ずっと前、博士に紹介されたロボット『ターボマン』
最初の頃は何かと突っかかってきたが今では逆に、俺から歩み寄らないと会話すら出来ないくらい大人しいものになっていた。
悪く言えば俺に興味が無くなったんだと思う。または・・・・嫌われたか。
この前だって話しかけてもそっけない態度で返事をし、すぐにその場から立ち去ってしまった。
用事かと思えば他のロボットと楽しそうに喋ってやがったあのポンコツ!
俺といるときは一度もあんな顔しないくせに
・・・・・最近では殺意を持った目で睨まれたりするな・・・。
「やっぱ嫌われたか。」
何かしたという心当たりは特にないのだが、あの態度は以上だ。
知らないうちにヤツを怒らせるようなことをしてしまったのだろうか。
だが、思い返してみても原因だと思えるものは無く、レースで勝負をしたり、くだらない会話をしたりと何の問題も無い思い出だけが頭に浮かんでくる。
「・・・・チッ」
らしくない。本当にらしくない!
後輩機1体に嫌われたぐらいで何をうじうじと考え込んでいるんだ俺は!!
確かにレース仲間が出来たのは嬉しかった。
でもこんなに思うほどでもないだろう!
他にも仲間はいる。
そうだ。たかが1体に・・・・
・・・・・・。
「何かようですかクイック先輩。」
「なんだ。そのあからさまに嫌そうな顔は。」
何も考えずに出て来てしまったのだが、予想通りターボマンはレース場にいた。
でもいつもと違っていて、どことなく寂しそうで
心配になって話しかけてみれば今みたいに嫌な顔をされてしまった。
本当に嫌な後輩だと思う。
でも・・・・
「・・・・謝りに来た。」
やっぱり俺にとっては可愛い後輩で、レース仲間で、
なにより俺はコイツといる時が一番楽しかったから
「まぁ、正直どうしてお前が怒ってるのか分かっていないんだけど
・・・・・・悪かった。」
・・・・・返事がない。ただの屍のようだ。ってあるはずないよな。
結構俺としては真面目に謝った方なんだが・・・
おそるおそる下げた頭を上げ、前を見てみる
まだ怒っているターボマンを予想していたのだが違っていた。
ターボマンは、レースで負けた時のような顔をして俺をじっと見つめていた。
「すみません。」
そしてターボマンから出てきたのは謝罪の言葉。
もう訳が分からない。どうしてお前が謝るんだ?
「俺が悪かったんじゃないのか?」
「先輩は、何も悪くないんです。
俺、どうすれば良いか分からなくて
だってこんな・・・・ッッ」
初めて見る。こんなに困惑したターボマンは・・・
こんな時にこんな事を思うのはどうかと思うのだが、何故か違う一面を見れて少し嬉しいと思ってしまっている俺がいる。
いつもは何処か落ち着いた雰囲気があるのに今は全く無くて、興奮しているせいかいつもより声が少しデカイし・・・・ちょっと泣いてないか?
あ。泣いた。
(てか、洗浄液出るんだな。)
・・・・うん。
なんだろうな、コレ。
本当に何なんだろうな。
今、凄く俺は目の前にいる涙(洗浄液)をボロボロ流した図体のデカイ後輩ロボットを抱きしめて、頭の塗装が剥げそうなくらい撫でまわして、顔中にキスをしてやりたい。
あぁ・・・もう、ホント
「可愛い」
思わず口に出た言葉に驚いた表情で俺の方を見てくるターボマンは凄く新鮮で、やっぱり可愛くて、俺は欲望のままに抱きしめた。
(自覚すると歯止めって利かなくなるんだな。すげぇわ・・・)
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