呼び止められて、立ち止まって振り向けば、目の前にプレゼント用に包装された箱が突きつけられた。
「……なにこれ?」
「どうみてもプレゼントだろ」
「……なんで?」
「ホワイトデーだし」
「……誰に?」
「ユズに」
「……私バレンタインにあげてないんだけど、三和君に」
箱を差し出して来たのは、三和だった。
確かに、ちなみにクッキーな、と笑う三和の言う通り、今日はホワイトデーだったけれど、三和にバレンタインにチョコレートをあげていないので、ホワイトデーにお返しと思われる品を受け取る法則は成立しない。
「だからさ、来年のバレンタインデーにチョコレートのお返しくれればいいから」
「……意味が解らないんだけど」
バレンタインデーのお返しをするのがホワイトデーであり、ホワイトデーのお返しをするのがバレンタインデーじゃない。
押し返そうとプレゼントに触れた途端三和がプレゼントから手を離すから、とっさに落ちそうになったプレゼントを掴んでしまう。
「じゃ来年楽しみにしてるぜ」
「ちょっと待ってよ!」
二本指を立てカッコつけたようなポーズを取ると、駆け足で行ってしまう。
詐欺にあったような気分になりながら、手に持ったプレゼントを見つめる。
「…やられた」
あの子のハートを掴み取れ!
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お題:)Aコース
110320 緋色來知
12/08/12 加筆修正
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