ざわざわ。
例え小さい声も集まればそれなりの大きさの声になる。人もたくさん集まればその中を歩いていくには少し難しい。

なのにレオンはユズを全くいないもののようにさっさと一人で行ってしまう。

幸いなのはレオンが太陽の光に眩しく反射する金の髪を持っていることだ。ユズはそれを道標にして、レオンを追っていく。

けれどもレオンのように人混みを上手く切り抜くすべを知らないユズとレオンの間はどんどん広がっていく。

歩いていたのが駆け足になって最後は走るけれども、あのアホ毛は先に進んでしまって、見えなくなってしまった。

「レオン……」

名前を呟いたってレオンは戻ってくるところではなく、気付いてすらいない。
風の導きと言っていたから、それに夢中でレオンはユズがいないことすら気がついていないだろう。

しょぼんと落ち込むと人混みから避け端の方を歩きながら、ポケットから取り出した携帯を握る。
きっとユズがいなくなったことに気がつけば、レオンは連絡を入れてくれるだろう。
マナーモードにしてある携帯は連絡が来れば、バイブが鳴るようにしてあるから、こうやって手に握っていれば気が付かないということはないだろう。

顔を上げると向こうからこっちを見ずに走ってくる男の子がいた。

「きゃっ」
「すいません!」

とっさのことで動けず、男の子とぶつかる。
男の子は謝ると走っていってしまう。

「びっくりした……」

そう言いながら開いた手には携帯がない。
驚いて落としてしまったらしい。足下にあったそれを取ろうとユズが手を伸ばすよりも先に別の手が携帯を拾った。

「何をやっている」
「レオン!」

携帯を拾ってくれたのはレオンで、その表情は呆れているようだった。

「勝手にはぐれるな。行くぞ」
「う、うん」

先に行ってしまったのはレオンだ。
怒っていいのはユズの方なのに、レオンがユズの手を繋いで歩き出すので何も言えなかった。

レオンと手を繋ぐこと。昔はよくやっていたのに最近はやらなくなった。ユズもレオンももう子供ではないから。
だからか、久しぶりに繋いだレオンの手がユズよりも大きくなったように感じた。実際に成長期のレオンはユズよりも大きくなっているのだろう。

カードを扱う、ユズよりも細くて綺麗な指にぎゅっと握られた自分の手を見てユズは微笑んだ。


手と手を繋いで、君と一緒に
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2012/08/26 緋色来知

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