部屋に帰って来てまでパソコンに夢中な鬼道に若干燐はうんざりしながら歩み寄る。

今やっている雷門のコーチとして、自分のチームと相手チームの分析やらなんやら頑張らなくてはいけないのはわかるけれども、彼女がコーヒーを淹れて隣に座やって来ても気付かないってどうだろう。

燐に全く気が付かない鬼道が誤って倒さないところにコーヒーとチョコレートを置いて、近くのソファーに腰かける。
私物は少ないけれども、どれもこれも高そうな鬼道の部屋の家具に燐は昔は緊張しながら座ったりしたものだが、最近はそこまで気兼ねしなくなった。
フカフカなソファーが若干乱暴に座った燐を優しく受け入れる。

テーブルに置いた自分用に持ってきた紅茶とちょっぴり奮発した苺ののったショートケーキを食べながら、全くこっちに気が付かない鬼道の背中を見つめていると、パソコンに向かっていた鬼道の手が止まった。

コーヒーの匂いに気が付いたのか、顔を上げた鬼道がコーヒーを見てから、こっちを振り向く。
外とは違って、特徴的なサングラスを外した鬼道の赤い瞳が燐を捉えると、柔らかく微笑む。
初めて会った頃よりも精悍になった顔付きだけど、その優しく微笑む表情だけはあの頃と変わらないから、言おうとした文句が全部ぶっ飛んでしまった。

「…ノックしても返事がないから勝手に入ったよ」
「あぁ、コーヒーありがとう」
「ドウイタシマシテ」

それでも何か言わないといけないと鬼道より先に口を開けば、出た言葉は部屋に勝手に入ったことを詫びる言葉だったので、何も言わなければ良かったと思いながら苺を咀嚼する。
こんなの鬼道にベタぼれみたいじゃないか。

またパソコンを触った鬼道は、コーヒーのカップを持って立ち上がる。
暗くなった画面からスリープにでもしたのかと思っていると、鬼道が燐の隣に腰をおろす。

「いいの?」
「粗方終わっている」
「ふーん」
「それより燐といる方が優先だからな」
「馬鹿じゃないの」

一気に上がった体温に間髪いれずに言ったけれども、照れた顔までは隠せない。
咄嗟に顔を鬼道から背けたけれども、鬼道が耳に触れるので恐らく耳まで真っ赤なのだろう。
悔し紛れに鬼道に肘鉄を食らわしてから、チラッと鬼道を見れば鬼道は幸せそうに笑っていた。



甘酸っぱい苺
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2012/03/23 緋色来知



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