マフラーに顔を埋めると今度はマフラーから出てる顔の上半分が寒い。とかいって上半分まで隠したら視界不良になってしまうから止めとくけど。

雪は降らないくせに、寒さだけは一人前の夕方。どんよりという言葉がよく似合う空の下、帰る方向が一緒の鬼道と一緒に家に帰ってる。

「鬼道、マフラーと手袋は?」
「…春菜に貸した」

確か部室に入るまでマフラーと手袋をしていたのに、部活が終わって一緒に帰るときにはその2つがなかった。
相変わらず何ともないという顔をしているけど手はポケットの中だ。

「そういえば春菜ちゃん忘れたって言ってたもんね」

朝寝坊して親に送ってもらったら忘れてしまったと困った顔をして春菜ちゃんは言ってた。
さすがはお兄ちゃん、寒いのに妹優先らしい。
でも隣で防寒具何もなしという姿はこっちまで寒くなってきそう。

「はい、マフラー」
「おい、燐」

自分の首に巻いたマフラーほどいて、鬼道の前に回り込むとまっ白のマフラーを鬼道の首にぐるぐると巻き付ける。

「選手が風邪を引いたらどうするのさ」
「マネージャー兼選手が引いても大変だろうが」
「それお気に入りだから。返すまで大 事にしてよね」

鬼道の首に巻いたマフラーはお母さんが作ってくれたもの。
所々ボコボコしているのはご愛嬌だ。

返そうとしているのか、マフラーを鬼道の手が掴むが、呆れたように溜め息を吐いて手を離した。

「お人好しだな」
「鬼道に言われたくない」

ゴーグルから見える赤い瞳が呆れたように、困ったように細められる。

「明日には返す」
「待ってるよ」

律儀な鬼道のことだからすぐに帰ってくるだろう、と思いながら鬼道と二人で帰った。


君は優しさで出来ている
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110319 緋色來知



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