「お兄ちゃんと燐先輩って付き合ってるんですか?」
「は?」

春菜ちゃんの言葉に、ボトルを地面に落として、私はかなり間抜けな声を出した。



何時も通りに部活を開始して、みんなはグラウンドを走っている。今日のノルマは10周で秋ちゃんがタイムを測って、夏未ちゃんが今何周って伝えている。
やっぱり早いのは風丸で、颯爽とグラウンドを駆け抜ける。何時もなら一緒に走るんだけど、今日はドリンクの準備がまだ出来てないからマネージャー業に専念することにした。たまたまみんな用事やら日直で遅くなってしまったから。
そういうことで、春菜ちゃんとボトルに粉末を入れて準備をしていて、冒頭に戻る。

落ちたボトルは蓋を閉めていたから中身が零れることはなかったけど。

春菜ちゃんのお兄ちゃんとは間違いなくあの鬼道で燐先輩とは私のことである。もしかしたら私と同名の人がいるかもしれない。

「誰と誰が付き合ってるって?」
「だからお兄ちゃんと燐先輩が」

分かり易くグラウンドの方を指して、そして私を指差す。私はその手振りを復唱するようにもう自分でやってみる。私と鬼道…。

「ないない」
「 嘘!」

一瞬考えて、落ちたボトルを持ち上げた反対の手を左右に振る。
そうすれば春菜ちゃんは一瞬動きが止まる。

「だってよく話しているじゃないですか」
「サッカーのね」
「よく二人で練習してるじゃないですか」
「同じMFだし」
「帰りとかみんなでいるのに気が付いたら二人で最後尾歩いてるじゃないですか」
「サッカーの話をね」

つまりはお互いにサッカー馬鹿という話である。
思えば会話のほとんどがサッカーの話で、後は授業の話とかがちょこっと入るくらいだ。
まあ確かに練習中は一緒のことが多いけど。

…そうか!

「春菜ちゃん、お兄ちゃんが私に取られたみたいでイヤなんだね!」
「え…」
「そっか今まで離れ離れだったもんね…ごめんよ、お兄ちゃんともっと話たかったんだね」
「ち、違います」

そういうことか。私も空気読めなかったなぁ。一人で納得していると春菜ちゃんは声を上げる。

「違います。最近お兄ちゃんと燐先輩仲がいいから」
「仲がいい?」
「だから二人の仲を応援しようと思って」
「もんの凄く勘違いだと思うよ、春菜ちゃん」

目をキラキラさせて私に攻め寄る春菜ちゃんにいささか引 き気味の私。
やっぱり春菜ちゃんも女の子なんだよね。恋バナ好きなの解りますけど、私と鬼道君にはそういったものがこれっぽっちもございません。

「春菜、燐。もうランニング終わったぞ」

第三者の声がしたと思えば、多少息を切らせた鬼道がこっちに歩いてくる。
話しているうちにいつの間にか時間が経ってしまったみたいで、これはいい口実だとボトルの入ったカゴを持って春菜ちゃんにお先!っといって駆け出す。

「持とうか?」
「春菜ちゃんを」

鬼道とすれ違い様に会話する。
横を通り過ぎて私はイレブン達のとこに向かった。



「お兄ちゃんと燐先輩って仲がいいよね」
「普通だろ」

イレブンに配っている時に鬼道兄妹が何か揉めながら(春菜ちゃんが一方的にまくし立てながら)こっちに歩いてくるのが見えた。

知らない2人であるように
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お題:)たとえば僕が
09/01/21 緋色



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