夏だって雷門中イレブンは元気だ。
ゴールからの守の声、一ノ瀬と土門がふざける声に、鬼道の指示を出す声。

そんな中私は木陰でカバンを枕にして休んでいた。額には冷やしたタオルを秋が置いてくれて、ひんやりして気持ちいい。


「もう!!体調悪いならちゃんと言ってくれればいいのに」
「…自分じゃ解んないよ。最近毎日こんな感じだったし」

最近は夏バテ気味で、そして先程グラウンドの中でクラッときてしまったのだ。

クラッときただけならいいけれどそこにボールが跳んできて当たるところだったと、元々顔色が悪かったのもあり、マネージャー達によってこの木陰にて休憩させられることとなった。

「もう!鬼道君が助けてくれなかったらどうするつもりだったの」
「その時は素直に当たってたよ」
「燐!!」

アキが咎める用に声を上げる。いつもならいいけれど、ちょっと体調悪いときに叫ばれるとキツい。

跳んできたボールは、みんなが驚いて膠着して、ただ燐の名前を呼ぶ中、近くにいた鬼道がそのボールを弾いてくれたのだ。
マントが見えて、ボールを蹴る音がして、鬼道が助けてくれたのだと判断すると、ボールが来 たと意地でも何とかしようと立っていた状態から一気に力が抜けて、倒れるとまではいかなくてすんだがその場にうずくまってしまった。クルクルと回る目と頭を抱える私を支えて、ここまで連れてきてくれたのもその鬼道である。

隣に座って団扇で扇いでくれるアキに感謝を述べれば、春菜ちゃんの声がして、どうやら休憩に入ったらしい。
ちょっとの間ごめんね、とアキが立ち上がり駆けてった。マネージャーは三人しかいないし、公式戦に出られない自分はマネージャー兼選手だから、ここにマネージャーが二人もいては大変だ。練習に参加する時も少しはマネージャーらしいことをするので、尚更三人の負担が増えてしまったと多少と言わず反省する。
とりあえず手伝いに行ったアキに、ヒラヒラと肘から上の部分を使って手を降った。

葉の間から見える木漏れ日に、セミの鳴き声。少し体温が移って温くなり始めたタオルを目に当てて、目を瞑る。

「大丈夫か?」
「うん」

土手を上がる音がして、誰かが腰を下ろす音がした。続いてかけられた声に返事を返す。

「さっきはありがとね。助かったよ」
「当たらなくて良かったが、あまりムチャするな」
「お説教は勘弁。 こってり絞られましたよ」

来たのは鬼道で休憩の合間に来てくれたらしい。
なんだか説教に入りそうだったので、慌てて手を振って拒否の意を示す。

「だったら体調管理はきちんとしろ」
「はいはい」

鬼道の言葉におざなりに返事をする。
その返事に鬼道が何かを言おうとしたけれど、守の鬼道の名前を呼ぶ声にかき消された。

「大丈夫だよ、もうムチャはしない」
「…絶対だぞ」

自分の言葉にフォローを入れるように言えば、鬼道は一言言い残してグラウンドの方に走って行った。

「もうムチャはしないよ。だってあんな顔するんだもん」

私の前でボールを蹴った鬼道の顔は普段からは想像出来ない程焦っていて。

少しだけ嬉しかったと思ったが、心の中にそっとしまうことにした。



優しい君の領域で
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お題:)例えば僕が
季節外れ過ぎる…。
101212 緋色來知



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