アイチは日頃あまり経験したことのない、髪の毛をいじられるという感覚を味わっていた。
正しくは味わうどころか緊張して身体はカチンコチンで、ただ珍しく鼻歌なんて歌いながらアイチの髪をといていくミサキの触れている手の感触をドキドキしながら感じていた。
「やっぱりサラサラ。なんのシャンプー使ったらこうなるの?」
「さ、さあ?エミ達と同じのを使ってるから…」
「ふーん。今度聞いてみようかな」
ミサキの言葉にアイチは目の前に置かれた鏡越しにミサキを見る。
たまにミサキとすれ違うと香るミサキのシャンプーの匂いがアイチは好きだったから、シャンプーを変えてしまうことはアイチには残念でたまらない。
「?…どうかした?」
顔に出てしまったのか、首を傾げるミサキにアイチは「あ」とか「う」とか、そんな意味不明な言葉を発してから俯く。
「アイチ?」
「あ、あの…その…ミサキの今使ってるシャンプーの匂いが僕好きで…」
「そう?」
ミサキはアイチが言わんとしようといることを理解して、少しだけ頬を赤くさせて、でも平然を装ってすました顔でそっけない返事を返す。
「は、はい」
「アイチがそう言うなら換えない」
アイチと同じシャンプーの匂いをさせるのもいいな、と思っていたのに、アイチの言葉一つでミサキの気持ちが変わってしまう。
ホッと息を吐くアイチに可愛いと思いながら、ミサキはアイチの髪に櫛を通す。
アイチの髪の毛を少しだけとって、昔ミサキがシンにもらって一度も使ったことがないリボンのついたゴムで一つに纏める。
「できた。ふふ、可愛い」
ミサキがアイチの肩に手をおいて鏡に写るアイチを満足そうに覗き込む。
「そ、そうですか?」
「うん。今度女の子の格好してね」
「え!?」
戸惑うアイチの頬をミサキが撫でる。
「ヒラヒラのスカートを履いて、一緒にお出掛けしましょ?」
「は、はい…」
「約束よ」
約束、と言われて、アイチはコクリと頷く。
それにさらに満足そうにミサキは笑って、アイチの頬に唇を落とした。
イチゴのショートケーキ
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初ミサアイ。
私的にミサアイはミサキさんがアイチを溺愛しているイメージ。
他のがツンデレやら、腹黒ばかりだからその反動かもしれません(笑)
11/10/08 緋色来知
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