「暑い…」

じわじわと、いつか蜃気楼が見えてしまいそうなくらい暑い炎天下の街中は、出て来たことを後悔するくらい、クーラーに慣れた志摩にはしんどかった。
アスファルトというものが憎く感じてしまう程、アスファルトから来る熱気が志摩の体力をどんどん奪っていく。

7月でこんなんだから、8月なんてどうなってしまうのだろうと思うだけで嫌気が差した。

ダラダラ歩けば暑いし、かと言いつつ急ぐ気力はない。片手のコンビニ袋がやけに重い。

なんで外に出て来てしまったのだろう、と考えて、昼過ぎから遊びに来る恋人の姿が浮かんだ。
燐が来るから部屋を念入りに掃除して、一息をつくためにジュースを飲もうと冷蔵庫を開けてペットボトルを取り出すところまでは良かった。そこから氷を入れようと冷凍庫を開けたのが失敗だった。
昨晩の暑さに耐えきれずアイスを食べてしまったため、冷凍庫にはアイスがない。

燐はアイスが好きで、アイスを開ければ、目を輝かせて「ありがとう、志摩!」と言ってくれるのだ。
その様子が浮かんでしまって、財布をズボンの尻のポケットにねじ込んだ志摩はサンダルを引っ掛けてガンガンに冷えた部屋から飛び出したのだった。

志摩が回想に耽っている内にいつの間にか志摩の住む寮までもうちょっとという距離になった。
女の子と燐を見るときだけ上がる志摩の視力は、寮の入り口に釘付けになっしまう。

「奥村くん」
「志摩!」

こっちに気付いた途端に、パァッと夏のお日様だって顔負けな笑顔を浮かべた愛しい人に志摩は暑さもだるさも全て忘れて入り口まで走った。


アイス
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11/07/15 緋色来知



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