人に頼られるのは嬉しいことだと、志摩は思う。
ましてや、それが恋人からだともっと嬉しい。

誰よりも愛しい人に必要とされている、そう思うだけで誇らしい。

例えそれが、恋人にいつも勉強を教えてくれる弟が仕事でいなくて、その顔に似合わず意外と面倒見のいい幼なじみ(と気安く言っていいのかは解らないが)とは喧嘩中で、もう一人の穏やかな幼なじみが候補生として上級祓魔師について行ってしまったから、自分なのだとしても。

「ここは?」
「それはこの公式使うんですわ」
「この公式?」
「そう、yに代入して…」

狭い密室で二人っきり。甘さの欠片もない、数学の教科書の前に、二人隣に並んでお勉強会。
勝呂にもらったピンで前髪を留めた燐は、シャーペン片手に問題に苦戦中。
志摩はと言えば、自分の宿題をやりつつ、解らなくなると首を捻る燐に勉強を教えている。

二人っきりなのに、全く色気のない健全な日曜日。
志摩は思わず溜め息を吐いてしまう。

「解けた!」
「ようできました」

志摩が溜め息を吐くのと、変わらないタイミングで燐がキラキラと目を輝かせながら顔を上げた。
まるで子供のようにノートを手に持ち、志摩に見せてくる。
ざっと目を通すと、式にも問題なく、答えもあっている。

まるで子供を相手するかのように褒めれば、燐はもっと嬉しそうに笑う。

「志摩のお陰だ!」
「…どういたしまして」

その満開のひまわりのような笑顔に、志摩の心臓がトクンと音をたてる。

志摩が思う以上に健全なお付き合いをしている志摩と燐だが(それにはあまりにも初々しい燐と、そしてブラコンという名の小舅、もとい弟のせいである)、志摩はこの関係を気に入っていた。

確かにこの青少年にありがちな抑えきれない欲求はあるけれども、この笑顔を見ればこの清い関係もええなぁ、と思えてくる。
もっと踏み込んだ関係になりたいという気持ちは捨ててはいないのだけれども。

とりあえずはまず、何かあった時に最初に頼るような人物になろうと、今志摩自身がどこにいるのか解らないけれど燐のかっこいい奴ランキングのトップを目指して、また質問してくる燐に教えるべく教科書を覗き込んだ。


ストロベリージャム
--------------
11/06/10 緋色来知

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -