「ハリーさん?」

配達からの帰り道、いきなりヴァシュカが吠え始めた。
すると聞き覚えのある鳴き声が響き、ザジが空を見上げれば恋人の相棒がザジの頭上を旋回していた。

ザジがハリーに気が付いたことがわかると、ハリーは高度を下げて、ザジの肩に舞い降りた。

猛禽類の爪が肩に止まることにも慣れたザジは、すりよってきたヴァシュカの頭を撫でながら、ハリーを見る。

近くにハリーの相棒がいるのかと思っていると、ハリーの足には何か紙が結んである。
ザジが気になって聞けば、早く外せとでも言うように、ハリーが鳴いた。

ザジがその紙を開けば、何度かだけ見た、恋人の字が見えた。

「どうしたんだろう?」

ザジは恋人から手紙をもらったことはなく、一体なんの用かと首を傾げる。

開いた、その手紙は手紙と言うには短すぎる、たった一言しかない手紙だった。
けれども、ザジのこころを幸せにするにはそれで十分だった。

「ハリーさん、ちょっと待っててくれよ」

ザジの言葉にハリーが頷く。

あ、と思い出したように、最近常備するようになった干し肉を取り出してハリーに与えると、ハリーは美味しそうに干し肉を食べる。

大事にジギーからの手紙をポケットにしまってから、ザジはほとんどというくらい使ったことのないカバンに入っているだけだったペンのセットを取り出した。

ちょうど机のような平べったい面が上を向いている岩を見付けて、それにペンのセットを置いた。

インクを羽根ペンにつけると、セットと一緒に入っていたまだ真っ白な紙に一言だけ書くと、その文字が変ではないかと色んな角度から見て確かめる。
ついでにインクが乾いたことも確認してから、ハリーを呼ぶ。

「それじゃ、これをジギーさんに届けてくれ」

行きと同じように、ハリーの片足に手紙をくくりつければ、ハリーはわかったと言うように鳴いた。

高く舞い上がったハリーに手を振れば、ハリーはその名の通りスピードを上げて飛んで行った。

「ゴギャア?」
「ヴァシュカ!明日にはジギーさんがハチノスに帰ってくるんだと!」

なんて手紙に書いてあったのかと、ヴァシュカが聞いているような気がして、ザジは喜びのまま、書いてあったことを伝える。

ヴァシュカは主人の嬉しそうな姿に、嬉しそうに鳴く。

「早く帰ってジギーさんの好きなスープを作って待つんだ」
「ゴギャア!」

返事をするようにヴァシュカが鳴いて、ザジは走り出す。その隣をヴァシュカが添って走る。
二人は見えてきたハチノスのあるユウサリ中央に、さらにスピードを上げた。



『明日には帰る』
『待ってます』


幸せを運ぶ
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2012/02/10 緋色来知


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