パソコンに向かい、お気に入りのヘッドホンで音楽を聞く正一の後ろにはさっきから監視対象兼ボディーガードである人物がベッタリと引っ付いている。

こうしていると何かあったときに守り易いというが、ここはボンゴレのアジトの一室で、壁はちょっとそっとやの攻撃では傷一つ付かない。
廊下に通じるドアのロックはこのアジトの主である綱吉でさえも知らない。
それ故に毎回入ってくる白蘭がどうやって入ってくるのかが不思議なくらいなのに。

「……白蘭サン」
「なんだい?」
「…あんまりくっつかないでもらえます?熱いんですけど」
「なら空調もうちょっと下げようか?」
「アナタが離れてくれればいいんです!!」

怒り出した正一に白蘭は「出たよ、正チャンの逆ギレ」と言いながら、正一から離れた。

正一から身体を離した白蘭は、一体どこから持ち込んだのか、白蘭用のフカフカな椅子に腰を掛けて退屈そうに椅子でクルクル周り始める。
そんな子供っぽい動作も何故か白蘭がやると違和感がない。

まるでメローネ基地を指揮していたときみたいだとスパナに言われるくらい、冷たい目で白蘭を一瞥してから、ディスプレイに向かう。

けれども「つまらない」と言いながら、近くで回転されていると、いくら白蘭で忍耐力が付いた正一でもキャパシティを楽々と越えてしまう。
元々逆ギレしやすいし、研究で集中したいときにやられては忍耐力も何もないだろう。

なんとか耐えた忍耐でデータを保存した正一は、次の瞬間ブチギレる。

「なら、この部屋から出て行って、真六弔花とでも遊べばいいでしょう!?」
「ダメだよ、僕は正チャンのボディーガードなんだから」

椅子から立ち上がり白蘭の方を向いた正一に、怒られたというよりもやっと構ってもらったかのように笑みを浮かべる白蘭に正一はまたキレる。

しかも、ボディーガードだと都合のいいことを言い出すものだから、一瞬正一はどもってからドアの方を指差す。

「だったら廊下にでもいてください!研究の邪魔だ!!」
「正チャンが恋人を邪険にするー」
「誰が恋び…」
「こんなことをする関係なのに?」

ドアを指した手を取られ、グイッと白蘭に引っ張られる。

いきなりで尚且つ白蘭に力で勝つことなんて骸がクフフというのを止めるくらい有り得ない正一が対処しきれるハズもなく、白蘭の胸の中にダイブすることになる。

一応力加減はしたのか、フワッと抱き締められて、正一は身体を打ち付けることはなかった。

慣れた白蘭の花のような香水の匂いに、一瞬気を取られていると、白蘭の腕が正一の背中に回った。
だけなら良かったが、自分専用の研究室内だからと、Tシャツとジーンズというラフな格好をしていたせいで、白蘭の手がTシャツの中に入ってくる。

あのときを思い出させるいやらしい動きに顔が赤くなれば、白蘭が笑みを深くして正一の首筋に頭を埋める。

「ひっ」

正一の首に赤い花が咲いて、白蘭は所有の証を舌で舐める。

「びゃ、白蘭サン!」

慌てて白蘭の胸板を押して離れようとするが、全くもって効果がない様子に正一はテンパる。

「もっと凄いことだってしてるよね、僕ら」
「っ」

そんな正一を笑うと白蘭は正一の耳元で喋る。いつもの明るい口調ではなく、低くそれでいて妖しい声は正一の心臓の鼓動を早くさせる。

「そ、それでも恋人同士じゃありません!」
「ふーん…正チャンは好きでもない奴と寝るんだ」
「ち、違っ…」「いい加減認めなちゃいなよ、往生際が悪いよ」
「は、離してください!」

正一が離せと言えば白蘭はあっさりと離した。
真っ赤な顔をしたまま、白蘭を見れば、白蘭は鼻歌を歌いながら自分専用の椅子に座って足を組む。

「ほーんと正チャンは強情」
「うるさいです!」
「そんなところが可愛いんだけど」
「可愛くない!!」

余裕な白蘭に、一人慌てている自分が嫌で正一は自分の椅子に座り、パソコンに向かう。

正一は白蘭を裏切った。
それが例え世界のためでも、白蘭を裏切ったことには変わりない。
昔あったあのチープな、君のためなら世界を敵に回せる、そんな言葉じゃないけれども、好きな人を裏切るような人間はその人に相応しくない。

一瞬陰った正一の表情に、白蘭が眉を少しだけ上げたが、正一は気付かなかった。

パソコンはすでにスリープになっていて、パスワードを打ち込もうとキーボードに触れればその手が取られる。

「ちょっと…白蘭サン…んっ」

こんなことをするのは白蘭しかいない。抗議の声を上げれば、顎に触れた白蘭の手が無理矢理正一を白蘭の方に向かせる。

深い口付けに慣れない正一は、白蘭が離れるときには息が上がっていた。
飲み込みきれなかったどちらかわからない唾液を白蘭は舐めとると、正一を抱き上げた。

今まで散々白蘭に白蘭好みに好き勝手にされてきた正一は、白蘭のキス一つで過剰な反応をするようになっていた。

「びゃ、白蘭サン!?」

口では反抗するけれど、とろけそうな、そんな甘い表情を浮かべる正一は隣の私室に運ばれ、ベッドに優しく下ろされると眼鏡を取られる。

自分に触れる手に正一は抵抗するが、白蘭の手は止まらない。
一つにまとめられた正一の手を軽く押さえたまま、白蘭は耳元で囁く。

「…正チャンだけなんだよ。僕をこんな気持ちにさせるのは」

際限なく上がる正一の体温に、白蘭はクスッと笑うと照れ隠しのように暴れる正一を押さえ込んで口づけを落とした。


それだけ愛しているってことだから 下
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12/01/02 緋色来知



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