「好きだよ、兄さん」
そう言いながら、抱き締める弟の胸の中に顔を埋める。
男同士だとか、兄弟だとか、これはいけない思いなんだとか、たくさんの考えが頭の中に回るけれど、弟を、雪男を突き放せない。
「全部関係ない。僕は兄さんが好きなんだ」
まるで自分の心の中を見透かされたような言葉に心臓が跳ねる。
自分より頭の良い弟がたくさん考えて、考えて考えて出した結論なんだろう。
なら、考えることが苦手な自分は自分の心に正直になるべきだ。
「……俺も雪男が好きだ」
「兄さん!」
雪男に聞こえるか解らないくらいの声の大きさになった言葉も雪男に聞こえたのか、雪男は腕の力を強める。
痛いくらいの腕の中で頭の中に浮かぶ考えを全て捨てる。
自分には雪男がいれば、雪男がいればそれでいい。
--------------
ボ/カ/ロの磁/石を聞いているとこんなSSSが出来ました。
11/05/01 緋色来知
←