≫志摩→燐
雨の中、傘も差さないで俯いたクラスメートが志摩の視界に入った。
傘を差している自分としてはこのまま見捨てていくのは少し心が痛むから、中に入れてあげて一緒に帰ろうと声をかけようと口を開けた途端、驚くものを見て声が出なかった。
笑顔をよく浮かべ、坊と喧嘩まがいなことをよくする彼が泣いていたのだ。
雨と見間違いかと思ったけれども、よく見れば肩が震えている。
茫然と立ちすくむ中、彼はこっちに気付かず行ってしまった。
「奥村君……」
見たことのない姿を見た余韻が、心の中を疼かせる。
今までに感じたことがないくらい、大きな感情が生まれるのが解った。
始まりは雨の日から
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11/05/03 緋色来知
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