干されたシーツに洗濯物。
青空の下でパタパタと音を立てながら、気持ちよさそうに風に凪いでいるそれらを見ながら、頭の中では授業のことを考える。

今度使う薬品は扱いが難しい。
特に気を付けるべきは兄さんだけど、失礼なことを言えばしえみさんも怪しい。

そんなことをつらつらと考えていると、隣で寝ていた兄さんがむにゃむにゃと寝言を言いながら、寝返りを打つ。
兄さんの頭の辺りに丸くなって寝ているクロが、兄さんが寝返りを打った時にどういう寝相をしてるんだか、腕が当たって一回起きた。辺りを見回して起こされた原因が解ったクロは兄さんを恨めしそうに見て、ちょっとだけ兄さんから離れて、また丸くなった。

猫又にまでしてしまう嫉妬心が、兄さんからクロが離れたことによって少しだけおさまる。
どんだけ心が狭いのか、そうどこかでせせら笑う自分がいたけれど、聞こえないフリをした。

「……ねな……いのか?」
「起きたの、兄さん?」

少しだけ瞼を持ち上げて、雪男を見上げる燐に、起きたのなんて言いながらも、雪男のベッドに入ってくるときと同じく寝ぼけているのだと予想を付ける。

「……そうだね、いい天気だし。僕も寝ようか」

そう言えば兄さんはいつもより幼く見える笑みを浮かべる。
寝転がって兄さんの方を見れば、兄さんは僕との距離を縮める。腕の中に僕より小柄な兄さんの身体を引き入れれば、あっという間に兄さんはまた眠りに落ちる。

傍には子供体温の兄さん、尚且つポカポカという表現が似合う天気の中ではこの眠気に逆らう方がバカらしい。

腕の中の愛しい人をさらに抱き寄せて、メガネを近くに置いてから僕は目を閉じた。


日だまりの中に
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11/05/09 緋色来知

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