「6.願う」から続いています。


手こずった。
そう思い、雪男は舌打ちをした。
報告よりもずっと強い悪魔に、酷い被害。
兄さんには次の日には帰ると言ったのに、三日も経ってしまったと他の人の前では見せないイラついた表情で、雨の中を走る。

傘なんて借りるのも煩わしくて、一秒でも早く兄さんに会いたくて、寝不足で尚且つ悪魔退治でクタクタな身体に鞭を打って走る。

二人だけで住む寮が見えた時、雪男は窓が開いているのが見えた。
そこに愛しい兄が外を見ているのを見つけて、思わず叫ぶ。

「兄さん!」
「雪男!」

名前を呼ばれて、走りながら手を振る雪男を見つけた燐は嬉しそうに笑って立ち上がる。

燐の姿を見て、ホッと息を吐いた雪男は次の瞬間心臓が止まりそうなくらい驚いて、走るスピードを上げた。

「兄さん!?」

何故なら燐が窓枠に足をかけて、飛び降りたから。

なんとか着地点にまでたどり着いて、雪男より一回り小さな燐の身体を受け止める。

「何するの、兄さん!?」
「……心配した」

多少はよろけたものの、その場に踏みとどまった雪男は、雪男の胸に顔を押し付ける燐に半ば怒鳴るように燐の名前を呼んだ。
危ない、とか、もっとよく考えて行動しろ、とか、燐相手ならたくさん思い付く小言と、飛び降りるという危険な行為に対して憤る感情が燐の一言で一気に吹っ飛ぶ。

残ったのは愛おしさで、雪男は力を込めて燐を抱き締める。

雨に混じって聞こえる嗚咽に、あぁ想っていたのは自分だけじゃなかったのだと、思った。


7.想う
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11/04/19 緋色来知


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