Innermost energonに関する捏造万歳
「お前にこれをやろう。」
いつものメディベイ。今日も今日とて自分より何倍も大きな彼らがいるそこへ迷い込んでしまったなまえは来て早々ファルマから差し出された小さなガラス瓶のようななにかに戸惑っていた。
「……?これ、なに?」
拙いサイバトロン語を単語だけで繋げて首を傾げる。その幼い仕草に毎回ファルマが僅かに頬を緩めているのを彼女は知らない。
「これは……一般的にはインナーモストエネルゴンと呼ばれているものだ。」
まじまじと渡された小瓶の中身を見つめていると居心地悪そうに顔を逸らしたフォルマ。毒、ではないと思う。けれど透明度の高い紫色のとろりとした液体は正直得体が知れない。開けて匂いを嗅いでみようとしたらまた止められた。一体中身はなんなのだろうか。
「悪いが私は今から患者の回診がある。私の自室まで連れて行ってやるから大人しくしているように。ファーストエイドやアンブロンに会っても着いてくんじゃないぞ。」
「え、えっと、ファーストエイドとアンブロン?」
「ああ、着いて行くな。待っていろ。分かったか?」
「うん、待ってる。」
簡単な単語を並べてへにゃへにゃと頬を緩めて頷いた彼女がファルマの大きな指先に自分のそれを重ねた。ちょうど指先に拳が当たるような形と共に聞こえたぺちり、と抜けた音。だがあまりにスケールが違いすぎてほとんど感じることは無い。彼女に取ったらだいぶ大きいであろうファルマの手のひらの上で座り込んでいるのをすれ違った患者は訝しげに眺めていた。不躾な視線に睨みを効かせながらファルマは彼の部屋のテーブルの上にそっと彼女を離してやった。
「がんばってね、おしごと。」
やや舌足らずな発音がやわらかにファルマの聴覚センサーへ届けられまた彼は不覚にもスパークをどきどきと高鳴らせたのだった。
***
「おい!ファルマ先生ー!……どこに、」
空気が押し出されるような音の後入ってきたのは黄色い目のトランスフォーマーだった。誰もいないはずだった部屋に訪れた侵入者になまえはびくりと体を強ばらせる。ファルマに誰にも着いていくなと言われたのだ。それはつまり誰かがここに入って来ることがあってもその誰かは自分にとって良くないというわけで。
「あっち、行って。」
なんとか絞り出した拙い言葉。そのロボットはそう言われたことよりも彼女がいたこと自体に動揺したようだった。余計なことをしてしまった、そう後悔するが後の祭りだ。
「なんでこんな所にヘンテコな生き物がいるんだ?ファルマのヤツ何考えてるんだ……」
ひとりで何やら話し始めた黄色い目の彼。あまりに早すぎる言葉に早々理解を諦めた彼女は困惑したように傷だらけの機体を見上げていた。
「お前、どこからきた?」
「地球。」
「……データバンクにはないな。近くの衛星ではないのか。」
「私、ファルマ先生に、待ってろ、言われた。」
「彼のペットなのか?」
「……?私は、なまえ、私の名前。」
「あー、俺はアンブロン。メディックだ。」
「アンブロン、せんせい。」
小さな手でキュッとアンブロンの指先を握った彼女がころころと笑った。まるで幼体のようだ。アンブロンにとって目の前の小さな存在は全くもって未知のものであったが、今すぐ排除しなければならないわけでもないだろうと、ひとまず警戒を解く。
「何持ってるんだ?」
「これ?」
「ああ。」
「ファルマ先生がくれた。紫の綺麗なの。」
「おい、それ……インナーモストエネルゴンじゃねえか。」
「いんなー、もすと、エネルゴン?」
若干引き気味のアンブロンと首を傾げるなまえ。ちぐはぐな反応に気づくものはもちろん居ない。ファルマがそれを彼女に与えたということはつまりそれほどこの生き物を大切にしているということで。道理で最近おかしなものことばかりしていたわけだ。いきなり指の関節パーツひとつよりも小さなガラスの生成方法を聞いてきたと思ったら何かを思いついたかのように縮小装置をロストライト乗船中の科学者から借りる。職務外の時間に彼がどんな研究をしようと自由であったがときおり頬を緩めるのはあまりに不気味すぎた。まさかインナーモストエネルゴンを抽出していたとは。
「いいか、それは絶対に誰かに見せちゃあだめだぞ。大切に取っておくんだなを」
「危ないの?」
「……い、いやそうじゃないが。」
少々はばかられた。恐らくアンブロンがそれを伝えても彼女は分からないだろう。トランスフォーマーにとってインナーモストエネルゴンを渡すことが珍しいことではない。戦地に出向く友に、大切な恋人に、自身の体の中を流れる文字通り「一部」を渡すのだ。様々なシチュエーションで行われてきたことを、比較的古い機体であったアンバロンも知っていたが、まさかそんな俗っぽいことをファルマがするとは思わなかった。元ディセプティコンであるアンブロンだって、インナーモストエネルゴンを渡すなんて下らないものだと思っていた。
「綺麗な紫だね。」
「あ、ああ、そうだな。」
だが大切そうに瓶を抱きしめた少女の前でとてもじゃないがそんなことを言えるはずもなく、ファルマと顔を合わせたらどんな反応をすればいいのか、頭をかかえたのだった。
list
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -