盲目イケメン原型主ちゃんと中間管理職で苦労TFジャズ
ディセプティコンが地球を征服してからオートボットの生き残りは身を寄せ合うように辛うじて形の残ったアイアコンへと集まっていた。かたん、と杖を叩いて瓦礫だらけの地面に少しばかり憂鬱になる。私が今立っている場所はどんな形をしていたのだろう。戦争の前も後も壊すことより作ることの方が多かった。だからこそ荒廃した星の姿を見ることはとても悲しい。
けれどもしかしたら結果として私は何かを壊していたのかもしれないと最近思うようになった。何か、とは随分、抽象的な言葉であるとおもう。はっきりしている。心、とか信条とかそんなあやふやなものではない。星自体を我々は破壊していたのだ。
「おや、また散歩に出かけていたのかい?」
恐らくフレンドリーな笑顔をこちらに向けているであろうその男の言葉に軽く頷いた。敵襲だったらどうするんだ、と赤い警備兵に咎められたのは記憶に新しい。ただでさえ防御が弱い私は残党兵に見つかりやすい、と。センサーが機体から僅かに発される磁場をキャッチしているからそんなことはないのに。
「ああ、そんなとこだ。真っ暗な建物に篭っていると、たまに星を見たくなる。」
「そうかい。」
かつん、と地面を少し強めに叩いた。広がる輪郭が私に情報を与えた後すぐに消えていく。分かっていても彼は何も言わなかった。
「すまないが、バイザーを取ってもらってもいいだろうか。君の顔が見たい。」
「いいとも。」
かしゃん、収納された音。足音と強まった磁場。伸ばした手から触れた輪郭をなぞった。顎に頬、オプティックの稼働する音が僅かに聞こえる目元、一つ一つを確かめなければ私には彼がどのような顔をしているか分からない。
「君は大丈夫か。」
無意識にこぼれた言葉をどのように受け取ったのかは分からなかった。けれど強ばった頬や張り詰めたような雰囲気を感じてなんとなく今の彼が平時のそれとは異なるような気がしたのだ。
「はは、心配してるのかい。」
ちゃかすような声に小さく頷く。昔なら気にならなかった些細な変化に気がつくようになった。視覚センサーの代わりにありとあらゆるセンサーを張り巡らせるようにした故のことであったが。
「ジャズ」
名前を呼べばふ、と笑う声。観念したように目元を下げて項垂れた彼は随分珍しい行動に出るものだ。
「正直なところ、そろそろキツいさ。今はまともに指揮を執ることができる者がいない。チームの中の空気も悪くなる一方だ。」
「そうか。」
「ああ、こんな時、プライムがいれば、なんて考えてしまう。」
「ああ、プライムは我々を引き連れるに充分な力のある方だ。」
「そうだろう。」
自嘲めいた肯定の言葉にしかし、と続ける。この男は誰よりも優秀である癖して自己否定のきらいがあるのだ。
「ジャズ。君だってそうやって隊のことを考えられているじゃないか。」
頬を撫でて、真っ直ぐに彼を見つめた。開いている青いオプティックは彼の隠されていない青いそれと絡む。彼が自分自身を納得させるのを見守るより、私が求めていた言葉をかかることの方が容易かった。
「私は君は充分に私たちの中で働きをしていると思う。みんな口には出さないが希望を捨てずに今日まで来れたのは君たちのような優秀な補佐官たちのおかげだと感謝しているんだ。」
もちろん、プロールも含めて。背を向けて、またこつり、と杖で叩いた。下っ端が知ったような口をきく、と思われてしまったかもしれない。けれども放って置けなかったのはこの悪化する一方の状況が見ていられなかったから。それだけだ。
***
時折、悪夢のような日々を思い出す。そうしてそれが次第に自分の身体を蝕んでいくような錯覚に陥り自分のスパークを引き裂いてしまいたい衝動に駆られるのだ。自分でも随分暴力的だと思う。科学者ギルドはおぞましい場所だった。正義の軍属と称しておきながらその行いはディセプティコンさながらだ。そして、頭のイカれた科学者共はそれが正しいと信じ込んでいた。敵になら何をしてもいい、と。かつて仲間だった同族の錆び切った手を掴めなかった。機体の圧に耐えきれず飛び出た赤いオプティックは今でも忘れられない。あれは地獄だった。
「くそっ、」
ぎりりと口を噛み締める。蹲って恐怖から逃れようとする行動はこれで何度目だろうか。私は特別優れているわけではなかった。確かに機体のテックスペックのみを見ればそうなのかもしれない。けれどそれだけ。他より性能のいい、けれど新型には劣る。若いわけでもないが長年の経験と言えるほど経験はなかった。
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