||| plus alpha F 「ねー先輩ー」 「ん?どうした。」 「オレ頑張って授業受けて追いつくからさァ、一年留年してくんね。なんていうの?とびきゅーっていうんだっけ。」 「何言ってるんだよ、飛び級?確かにリーチ君は賢いからできるかもしれないけれど。」 「だって!そうでもしねえと先輩いなくなっちゃうじゃん。」 「そりゃあね、だって僕、君より二つ年上だもの。」 「は〜?そんなの知ってるもん!」 「僕は研究機関からオファーだって来てるし、大体、君は卒業したら海に帰るんだろう?」 「別に決まったわけじゃねえし。家のこともどーせジェイドに任せたら何とかなると思うんだよね。」 「こらこら、そんなこと言ったらだめだろ。それに……仮に僕が留年して、飛び級したフロイド君と一緒になったからって何になるんだい。」 「……なまえ先輩の意地悪。もういいし!どーせオレのことなんてうぜー後輩にしか思ってないんでしょ。」 「えっいやそんなことないけど。」 「なら留年してくれんの、先輩」 「話が戻ったな」 J 「しくしく、ひどいですなまえさん、僕のことを置いて卒業してしまうなんて。」 「あれ、リーチ君……の吊り目の方か。」 「そんな見分け方してたんですか。詳しくお話聞かせてください。」 「えっ!いや、気にしないで、それでどうかした?」 「ええ、僕とっても悲しいんです。だってなまえさん、卒業したら僕たちのこと置いて陸で働いてしまうんですから。」 「そりゃいつまでも学生ではいられないからねえ。」 「ええ、構いません。ですから僕と契約してください。」 「アーシェングロット君みたいなこと言うね、リーチ君。」 「そりゃオクタヴィネル生ですから。」 「それで君は僕に何を吹っかけてこようとしてるのかな。」 「ふふふ、簡単です。この書類、全部で三枚同じものなんですが、こちらの名前の欄になまえさんのフルネームを記入してくださるだけで構いません。」 「は?これ、パートナーシップの同意書じゃん。君、何かの保証人にでもなってほしいの?」 「……これは、なかなか面倒ですね。」 「聞こえてるからね。」 「ふむ、では仕方ありません。海には一度添決めたものは必ず仕留めなければならないという掟がありますので。」 「待って、僕ほんとに何かした?君とはそこそこいい関係築けてたと思ってたんだけど」 「うふふ、大丈夫です、苦しいのは一瞬ですから、そのあと僕も後を追いますので。」 「まって、まって」 A 「あぁ、なまえ先輩!ちょうどよかった。今、お時間よろしいですか?」 「構わないけど、どうかした?」 「見せたいものがあるんです!今からラウンジにお連れしてもよろしいですか。」 「ねえ、これ金色の契約書だよね、君禁止されてなかった?」 「…とにかく!これにサインしてくださればなまえさんに素敵な尾びれを差し上げます。」 「うーん、別にひれはいらないかなあ。人間の生活を謳歌してるし。」 「っ…ならなまえさんは僕のことなんてどうでもいいんですか?人魚になんて興味がないと?」 「君、泣いてる?!ええと、ごめんねえ?」 「謝るくらいなら、ここにサインしろよぅ……!」 「参ったなあ。」 None 「それで結局どの子を選ぶんだよ。なまえ先輩は。」 「トレイ、やめてくれよ。」 「はは、冗談だよ。でも随分熱烈にアプローチ受けてるのにいつまでもあんな態度取ってるの見てるとなあ……本当は気付いてるんだろ。」 「だってかわいいじゃあないか。あんなに見目も良い美人な子たちが僕みたいな冴えない男に一生懸命になってるんだ。」 「冴えない、はちょっと違うと思うけどな。」 「はいはい、君の「普通」とは違って僕は本当につまらないし平凡な人間なんだよ。」 「ならきっぱり断ってやらないのか?卒業までにあいつらを何とかしないといつか海の底に引き摺り込まれそうだぞ、なまえ。」 「まさか、でも変身薬を盛られそうになったら、……そうだなあ綺麗な尾びれを手折って縛り付けてみようかな。それでも僕のことが好きだっていうなら考えなくもない。」 「おお、怖い。」 「だって割にあわないだろう?彼らの話では僕が失うものばかりだ。」 「……あいつら、なんにも知らないんだな。三人の…特にフロイドには手を焼かされているが、少し同情するよ。」 All 「ね、先輩、ウミガメ君と何話してたの」 「フロイドか。」 「っ、いつもオレの名前なんて呼んでくれねえのに、なに?そういう気分?」 「君じゃないんだから、まさか。ただ少しだけ聞いておきたくて、ついでにアズールとジェイドもね。」 「アズールたちバレてんじゃん、ウケる。」 「僕はアズールに言ったんですよ、せっかくなまえさんとお会いできたんですから直接お話しに行こうと。」 「は?お前、…まあいいです。でもなまえさんも人が悪いですよ、知ってたなら最初から…」 「ねえそんなに僕のことが好きなの?君たち三人。」 ごにょごにょと言い訳じみたことを言っている二人と不機嫌そうな一人と無視して尋ねてみる。きっと自分は悪い笑顔を浮かべていただろう。 「だって、僕に対する好意を隠そうともしないのに、肝心なことは何一つ伝えてくれないじゃないか、君たち。好きとか、愛してる、とかさ。」 「っ!だ、だって!」 「なあに?言葉にしたらはっきり断るとでも思った?それとも誤魔化すって?」 「だってなまえさん、少し鈍いじゃないですか。」 「そうだねえ、君たちが勝手にそう思ってるだけで別に普通だと思うけどね。というかあれだけ猛烈にアプロ―チされてたら嫌でも気が付くでしょ。君たちもそれを狙ってたんだろうし。」 みるみるうちに赤くなっている三人の人魚に思わず声を出して笑ってしまった。 「やっぱり僕のこと好きなんだあ。分かりやすくて、かわいいよ、君たち」 まあこちらもまんざらではないのだけれど。 Oct 21, 2021 14:29 browser-back please. |