夕美「え〜っと…すみません、拾ってもらった上に半分持ってもらっちゃって…」 蠍「いや………」 ほとんど日が暮れてしまった商店街を、気まずい空気で歩く二人… すると… 蠍「夕美、悪かったな…」 夕美「えっ…」 蠍「…さっきデイダラと銀夜にも言われた。 『夕美だって年頃だから、隠し事くらいある』…ってよ」 夕美「………」 蠍「そりゃそうだよな… 今更だが、反省した。 悪かった。 あんまり夕美くらいの年の頃、周りに人がいなかったからな… 無神経だった」 夕美「あの!先生…!!」 夕美は腰に付けていた鞄をガサガサと漁り、小さな箱を取り出した。 蠍「…?」 夕美「あの…お姉とデイダラさんが、粘土から作る銀細工っていうのを教えてくれて… 『大事な人にあげるもんだ!』って言われて、 …作ってたんです」 夕美が箱を開けると、中には細かな細工の入った綺麗なピアスが入っていた。 蠍「…これは?」 夕美「えっと… ピアス、です。 最近ずっとこれ作ってて… やっぱり傀儡師ですから、手に付けるアクセサリーじゃダメだと思って…」 蠍「えっ…」 夕美「すみません!! 完成してから渡そうと思ってて…その… 声を掛けられた時、まだ完成してなかったんです…」 蠍「…」 夕美「で、あの… はやく完成させて先生と仲直りしたくて、ずっと持ち歩いてたんです…」 日も落ち、辺りは真っ暗になってしまった。 そんな中… 歩いていた道の真ん中で、サソリは夕美を抱き締めた。 夕美「Σ先生!?」 蠍「…ズビッ………」 夕美「…泣いてます?」 蠍「あ゙〜… 絶対ェ俺、夕美がいねーと生きていけねぇ」 サソリは夕美の肩に額を当て、ゆっくりと抱き締める腕に力を入れた。 夕美「先生…」 蠍「イタチが夕美取るっつった時、滅茶苦茶焦った。 それに…夕美に、嫌われたんじゃねぇかって…」 夕美「そんなの… 私だって同じですよ。 『破門』って言われた時… 目からオイルが止まりませんでした」 蠍「ははっ…俺もだ… 自分で言っといてバラバラになりたくなった」 夕美「へへっ… やっぱり、私たち似てますね…」 蠍「無理もねぇ… 俺には夕美しかいねぇんだからよ」 夕美「それは…私だって同じですよ?」 ずっとその場で、抱き合って立っていた二人。 道行く人が、犬までもが気を使って通り過ぎて行く… 夕美「…あの、先生?」 蠍「…ん?」 夕美「角都さんが、温泉のチケットをくれました」 蠍「へぇ…」 夕美「ペアで、混浴なんですけど…」 蠍「角都グッジョブ!!!!」 夜空に向かって、親指を立てた手を突き上げるサソリ。 夕美「一緒に、行ってくれます?」 蠍「当たり前だろ? あ!でもちょっと待て!!」 そう言うとサソリは、夕美がチャクラ制御装置を付けている方の、自分の耳に千本で穴を開け、夕美にもらったピアスを付けた。 蠍「夕美の分はねぇのか?」 夕美「はい、先生の分しか…」 蠍「…よし。 夕美、帰ったら俺にも作り方教えてくれ。 俺が夕美に作ってやる」 夕美「本当ですか!? やった!楽しみにしてますね!!」 二人は、夜道を手を繋いで歩いていった… |