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夏の日差しが眩しい屋上にて、立入禁止のそこで眠る赤い髪の青年。
昼休みだからか騒がしい声が校内や校庭から響く中、青年は近くで鮮明に聞こえた少女の声に目を覚ました。

「先輩っ」
「ん…?ああ、夕美か」

寝転ぶサソリの頭元に膝をつき、上機嫌な笑顔で顔を覗き込む夕美はどうやら一人らしい。
銀夜はどうしたのかと問えば、クラスメイトと低レベルな言い争いをしていたから置いてきた、ということだった。

「今日はお姉もいませんから、はいっ」

自分の膝をぽんぽん叩き、サソリに何かを求める夕美。
サソリが訝しげに眉を寄せると夕美は頬を膨らませた。

「ひ、ざ、ま、く、らっ」

してあげます、と笑う夕美はいたずらっ子のようににひひと笑ってまた膝を叩く。
その笑い方久しぶりだなと思いながら膝に頭を乗せるとニコニコと笑う夕美が見えた。

「夕美」
「はい?」
「弁当はねえのか?」
「はい?」

サソリのいきなりの発言にきょとんとした顔で首を傾げるとサソリは「彼女の手作り弁当と膝枕は屋上のイベントだろ」と夕美の頬を撫でる。
意味を理解するまで時間がかかったのかしばらくの沈黙の後、夕美の頬が見る間に赤く染まった。

「かっかのっ!彼女ってなん……っ!」
「照れてんのか」
「てっ照れてませんっ!焦ってるだけですっ」

もう……しばらく見ないでください、と両手で顔を隠す夕美にサソリは小さく笑う。
口には出さないが、たまにはこんな日もいい。穏やかな気持ちで目を閉じると、鮮明になる聴覚が嫌な音を拾った。
すごい勢いで駆け上がって来る、足音。

「あっはっは、さっすがナンセンスJr.うっぜー」
「黙れ銀夜!!」

バンッと開く屋上の扉。
サソリと夕美を視界に入れた瞬間固まる銀夜に追い掛けてきたサスケが訝しげに屋上を覗き、また固まる。

「え……」
「は……はあああああ!!?」

顔を覆っていた両手を離した夕美は銀夜とサスケを目にしてから一瞬驚いたような声をあげてから、絶叫した自分の姉に向かって盛大なため息をついた。



屋上パラノイア
(旦那あー、授業サボるのか?うん。…あれ、銀夜?……何してるんだ、みんな?……というかなんでこの二人は固まってるんだ?うん)