裏庭の木陰は夏でも涼しい。 今日はなんとなく騒ぐ気分になれなくて、誰にも見つからないようにこっそりと教室を出た。 校舎の壁にもたれ掛かって、立てた膝に頭を乗せるとあまりの気持ち良さに眠気に襲われて、チャイムの音も夢の中に消えていった気がしていた。 「銀夜……?」 心地好い声が聞こえる。 そっと頭に触れる優しい感触に思わず笑ってしまって、あれ、これ夢だっけ? 「銀夜…、起きてるのか?うん」 もぞ、と身体を動かしてみる。あれ、こっちは現実か? 薄く目を開けてみると目の前で揺れる自分のものでない髪。 「んん……師匠ぉ……?」 まだあまり開かない目のまま顔を上げ、目の前の人物を映す。 あれ、師匠なんか顔赤い?ここ涼しいのに。 「師匠?……どしたの?」 「な、なにがだ、うん」 「なんか顔赤いぞ、うん」 熱でもあんのか?と首を傾げるとまた少し赤くなった気がした。 よくわかんね。 「あれ、そういや授業は……?」 「もうとっくに放課後だぞ、うん」 「まじかっ」 夕美探してっかなあ……。いや、さっさとサソリと帰っちまったかも。お姉ちゃん寂しい!なんて、馬鹿なことを考えながら頭を掻く。 ということは師匠は俺を探しに来てくれたのか……。嬉しいな、うん。 「ありがと、師匠」 にへ、と笑ってから立ち上がり、服についた草を払う。これ土とかついてたら夕美怒るよなあ……。 「ん?師匠?」 ふと見ると師匠は未だ座り込んだまま顔を伏せてしまっていて、俺なんかしたんだろうか。 「銀夜」 「ん?」 顔を伏せた状態で俺に手を出す師匠。 起こせってことかな、うん。 「よっ、……えっ?」 手を取って、引っ張ろうとした瞬間逆に引っ張られてバランスを崩してしまう。 転ぶ寸前でバランスを取り直すと師匠と同じ目線になっていた。 「あんまり可愛いことすんなよ、うん」 「え……」 師匠は熱があるみたいに顔が真っ赤で、あれ、本当にどうしたの今日。 そんなこと考えてる間にも師匠の顔が近付いてきて、……すんでのところで、師匠の顔を両手で覆った。 「うん!?」 「………サソリ。夕美、白。ナルト、サクラ、サスケ。………何してやがる」 師匠の後ろの草に向かって言い放つとサソリがガサッと顔を出した。次いで夕美。左から順に全員どんぴしゃだ。 「なんだ、ばれてたのかよ……つまんねえ」 「いえ!先輩の隠れ方は完璧でしたよ!?お兄の獣すぎる勘が悪いんです!」 ……こいつらは人のラブシーン邪魔したうえにラブラブしやがってチクショウめ。しかも人を獣扱いかよお姉ちゃん悲しい!! 「銀夜……」 「あっ師匠ごめん!」 両手で覆ったままでは息がしづらかったらしく、一旦思考を止めて手を離した。 師匠の顔はもう赤くなくて、なんとなく残念だ。 まあとりあえず、やっぱりそんな趣味がどうたらこうたらとか騒いでる奴らは置いて、みんなで帰ることにしようと思う。 この続きはまた今度。 (銀夜、今度は本当にするからな、うん) (な、なんのことだ!?うん!) (顔赤いぞ、うん) (……笑うなよ。さっきは師匠が赤かったんだぞ、うん) |