第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -


彼は人間でした。
彼の愛した彼は、人間を愛する人間でした。

人間が好きだと彼は笑います。
自分はバケモノだから、愛してもらえないと彼は呟きます。

バケモノじゃなかったら、自分は愛してもらえただろうか。
バケモノじゃなくなるには、どうしたらいいのだろうか。
身体が壊れてしまったら、人間になれるのだろうか。
彼は雨に打たれながら、頬に水を流します。

涙じゃなく、水。
人間じゃない自分が、涙を流すなんて。
だから、水。
ただの、水。
彼は自分にそう言い聞かせます。
悲しくなんかない、だって自分はバケモノだから。

「やあ、シズちゃん。傘もささずに何してるの?お散歩なわけないよねえ」

人間を愛する彼。
彼を愛さない彼。
歌うように話し、踊るように彼に近付く彼。

さあ、彼は彼の頬を伝うものに気付くでしょうか。

「シズちゃん、無視?そんなことできるようになったんだ?いつもみたいに殴ってこないわけ?」
「………」
「ねえ、シズちゃん。聞いてる?」
「………」

言葉を返さない彼。
追いかける彼。
彼を覗き込む彼。

「………ねえ、シズちゃん。…泣いてるの?」




愛を求めたその相手
(さあ、相手の気持ちに気付くのはどちらが先でしょうか)