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見つめたのは、一瞬。
手に触れたのは、多分、三秒。
唇に落ちたのは、……一秒、くらい。

なんで、なんでこうなった?
俺はただ大嫌いなそいつを殺してやるために追いかけていたのに。
なんで、なにがどうしてこうなった。

「なん、で、」
「まだわからないの」

あのニヤつくような笑顔もなくて、忌ま忌ましげというか呆れてるというかそんな顔で俺を見ていたから、俺もそんな顔見るのが初めてだったから、だから。

「わからないって、なにが」
「…はあ、もういいよ。シズちゃんが気付くわけないことに最初から俺が気付くべきだった」

はあ、とわざとらしいため息にいつもなら何か傍にあるものを投げちまうのに呆然として動けない。
なんで、こいつに、こんな。

「あのさ、シズちゃん。君は俺が嫌いで、俺も君が嫌いだ」
「よけいわからん、」
「でも、俺は君を愛してる」

呆然とした。
唖然とした。
有り得ないと思った。

「いみ、わかんねえ」
「愛してるんだよ、シズちゃん。君を」

さらに一歩近付くこいつから、逃げられなかったのも突き放せなかったのも俺。
目を反らせなかったのも、手を振りほどけなかったのも、さっきよりも長い長いキスを止めさせられなかったのも、俺。



思いもよらない感情はいつか自分の中で爆発して、
(ねえ、君も俺を愛して)
(いみ、わかんねえ、…っ)