大の男が二人で寝ても広いベッドは俺のために用意したものなのか、ベッドサイドに置かれたまだ新しい灰皿までイレギュラーのように存在していることになんだか笑いたくなった。 すやすやと寝息を立てている臨也は隣で煙草に火をつけることに気付きもしない。 こんな隙だらけの奴だったっけ。白い首筋をそっと撫でてみても少し身じろいでからまた安らかに眠りはじめた。 ああ、変わったな。 青臭い制服を纏っていたあの頃から。 こいつも俺も、変わりすぎた。 周りから見たら有り得ないだろうけど、今の自分が思い返すと無邪気だったんじゃないかと思えて来る。 きっとあの頃、幸せだったのだ、俺は。 じゃあ、今は? 幸せじゃないなんてことない。 俺に愛をくれる奴がいる。俺が愛をぶつけても、壊れない奴がいる。 また白い首筋をそっと触る。 壊れない?本当に?例えば今ここでこの首を絞めたなら、こいつは死んでしまうだろう。 そうしたら、俺は不幸になってしまうのだろうか。 わからない。 俺は臨也を殺せるのかすら。 わからない。 スプリングが跳ねないようそっと臨也に馬乗りになり、細い首に自分の両手を重ねる。 少しずつ少しずつ力を入れると、だんだんと指が食い込んでいった。 ああ、このまま殺してしまったら。 そうしたら俺は、一人ぼっちなのか? 「…ず、ちゃ……」 「……いざ、…や?」 見つめた先には、薄く目を開いて少し苦しそうな顔をしている臨也。起きてしまった。当たり前だ。 そっと、優しく、臨也の手が俺の手首に添えられる。もう一度、今度はちゃんと俺の名前を呼んだ臨也が、静かに笑う。 「……殺しなよ」 そしたら何故か視界が歪んで、力なんて入らなくなった。 幸福の存在証明 (なくなったら気付くって、誰かが言ってたから、) (いつかはお前を殺してみたい) |