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- ナノ -


泣き声が聞こえた。
誰のものかもわからない泣き声。
小さく嗚咽を漏らして、静かに泣く、誰かの声。

わからなくなったのだと、彼は言った。
なくしてしまったのだと、僕は言った。

違う、と彼は泣く。
なくしてなんてないと、見つからないだけだと、彼は叫ぶ。

諦めなよ。
諦めて、俺と一緒に来なよ。

次々に流れる涙を強引に手で拭って、首を振る彼が痛々しい。
助けてあげたいと思ってるはずなのに、彼に触れられない。

俺だけは君を必要とするよ。
君が望む言葉を何度でも言ってあげる。
ねえ、俺じゃ駄目なの?

違う、と彼は泣く。
涙が止まる時は、来ない。



暗幕
(愛してる、愛してるんだ、君を)