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「髪……伸びたな」

洗面所で伸びた前髪を引っ張ってみて、今日午後からデー……いやいや、あれ、買い物に出掛けるだけ、まあえっと、午後から買い物だし、とぐだぐだ考えてはさみと新聞を用意した。

「……よし、」

意気込んで、はさみを持った。



待ち合わせ場所に行くと相手はもう待っていて、微妙に浮かれた気分で近付く。

「ま、待った、か?」
「あ、シズちゃ……」

声をかけると臨也は振り向いて、俺の前髪に目を止めた。

「シズちゃん……髪、それ自分で切ったの?」
「え?ああ、前髪だけだけど」

なんかおかしいか?と前髪を抑えると臨也は笑い混じりにため息をついた。

「ガッタガタだよ……?」



だからって、だからってなんでこんなことになるんだと突っ込みたくて仕方がない。
俺は臨也に笑われた後、買い物の予定も中止して臨也のマンションにいた。

「ほ、本っ当に大丈夫か?」
「大丈夫だって。任せなよ」

床に新聞をひいた上に座らされて服の上から布を巻かれる。
後ろにははさみを持った臨也。

「失敗したら許さねえからな…!」
「心配しなくても今よりはマシにしてあげるよ」

その言葉にキレそうになりながらも、前髪に近付くはさみが見えて目を閉じた。


「はい、完成。」
「お……おお……」

見せられた鏡には綺麗に揃えられた前髪。
かなり早かったがたしかにこれに比べたらさっきまでの前髪はガッタガタだ。

「さ、さんきゅ」

布を外されて照れたように前髪を抑えると臨也は笑って言った。

「代金2000円になりまーす」



もしくは身体で払いなよ
(むしろ俺としてはそっちの方が嬉しいな)
(死ねばかっ!)