二人が同窓生でも知り合いでもないです 夜中二時かそれくらいに目が覚めて、そこで寝てしまっていたことに気が付いた。 仕事から帰ってきてそのままぱたんと眠気にやられたから風呂にも入ってないし晩メシも食べてない。 頭をガシガシと掻いてからとりあえず食欲を満たすため冷蔵庫を開けてみるがなにもない。綺麗さっぱり、なんにも入っていなかった。 「クソ……めんどくせえ」 長い長いため息をついて、仕方がないのでこのままコンビニに行くことにした。 コンビニで適当にカップ麺とプリンを買って、帰り道ではたと飲み物もなかったことに気が付いた。 コンビニまで引き返すのも面倒だし、近くにあった公園の自販機で何か買おうと近寄る。 夜風に気持ち良く当たりながら、むき身でポケットに入っていた120円を自販機の小銭投入口に滑り込ませてジュースのボタンを押した。 「……?」 出て来ない。 何回か押してみたが結果は変わらなかった。 イライラする。イライラするイライラするイライラする。 「――!」 何度もボタンを連打する指をグーに変えて殴ろうとした時、手首を誰かに捕まれた。 「ああ゙?なんだよ」 未だ俺の手首を掴んでいるそいつは夜に紛れるように真っ黒で、そこに浮いた赤い目を三日月形に細めて笑った。 「そんなことしたら、自販機が壊れちゃうよ」 「もう壊れてるじゃねえか。出て来ねえんだぞ」 イライラしながらそいつを睨みつける。 目の前の男に罪がないのはわかるが、それでもムカつくものはムカつく。 「あはは、この自販機はね、こう――、とうっ」 ダンッと男が自販機に俗に言うチョップを食らわせるとガダンと音がしてジュースが落ちてきた。 目を丸くしていると、目の前のそいつがしゃがんでジュースを取って手渡してくれる。 「はい」 「あ、ああ……サンキュ」 にこっと微笑んでまたね、と手を振って去っていく男。 闇に同化して消えていったように見えたそいつは人間じゃないようにも感じた。 自販機ランデブー (最後のそいつの台詞の通り、次の日に再会することになるのはまた別の話) |