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なんだか仕事がつまらなくなってきて彼女に会いに池袋へ足を向けた。
仕事は優秀な秘書に任せたから問題ないけれど、これで会えなかったらどうしようか。
……いや、絶対に見つけてくれるから大丈夫か。

「いーざーやぁー…、また来やがったのかテメエ……」

ほら、やっぱり。
つい顔がにやけて、彼女に笑顔を向けた。

「来やがったとは失礼だね。忙しい仕事の合間を縫って愛しのマイハニーに会いに来たってのに」
「な…っ」

俺が演技掛かった口調で言うとシズちゃんはぶわわっと顔を赤くする。
その表情にシズちゃんかーわーいー、なんておちゃらけて見せるけどてっきり自販機でも投げてくると思ってた俺には不意打ちもいいとこで。

「っ!!」

なにそれなにそれなにそのかお!!!
反則でしょ、そんな可愛い反応はさあ!
今なら何言っても許される気がする!!

「ねえ、シズちゃん!」
「な、なんだよ」

俺はシズちゃんに密着するほど近付いて、彼女の耳元に口を寄せてみる。
やっぱり顔を赤くして硬直しただけで、手を出してくる気配はない。
これもしかして俺の夢じゃないの!?
シズちゃんがこんなに素直だなんて…!!

「今日俺の家こない?」
「なん、でだよ……」
「そりゃあ………」


「殺す殺す殺す殺すぅうう!!!!!」

あ、やっぱり夢じゃない。

「シズちゃん……俺の遺言として、聞いてくれるかい?」

標識を手にする彼女に、夢のように可愛らしく現実のように美しい彼女に、今世最後の言葉を。

「君を愛してる」
「死ねっ!!!」



これはやっぱり現実でした。
(そして結局彼女は家に来ました。)