第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -


俺と他の人間との間には、何か透明の壁があった。
それは脆いようで、でも決して割れることのない硝子の壁だった。
見えるのに、届かない。
触れてはいけない、壊れてしまう。
だから、誰の手も取らない。取れない。

なのに、その壁をノックしたのは誰だった?

「好きだよ」

毎日のように繰り返される聞き飽きた台詞を今日もその男は語る。
好き、愛してる、君だけ、俺に似合わない言葉だらけで。

「君は何を恐れているんだい?」

何も、何も恐れてない。
恐れるべきは俺だろう?
お前が、俺を恐れるべきだ。

「君は俺が嫌いなんだろう?なら、この手を取ればいいじゃないか。君の思う通りなら、ほら、俺が壊れるだけだ」

うるさいうるさいうるさい。
俺に近寄ったら駄目なんだ。壊したくないんだ、誰も、誰も。

「俺は、君に手を伸ばした。君が少しでも愛を求めるのなら、」

硝子にそいつの手が触れる。
いやだ、壊れるはずのない硝子越しに、壊してしまう人間が笑う。

「いつか俺がこの壁を壊してあげるから、そしたら君は俺を壊してよ」

それが俺の望みだから。
ああ、そうやって微笑むから、だから。
硝子越しに手を重ねる。そうしたらどちらともなく、硝子越しのキスを。



ガラス越しにキスをした
(ほら、その壁取っ払おうよ)