婆沙羅 | ナノ





「よぉ。早めの帰りだったな」

「結局こうなるじゃねーかよ」

「仕方がないだろう」

「フン」

「おーい、旦那らー」

「おぉ!佐助!!」





第五話
  「落とすならどっち?」






「やはりそちらにも結界が多数あったのか…佐助、それは破れそうか?」

「全然!クナイで傷つけても殴ってみても破れる所か傷一つもつきやしないぜ。結界だから術を解いてみたけど、あれは結界じゃない。違うものだぜ」

「ふむ…他に侵入の手立ては?」

「残念だけど、俺様改めて未来とやらの頑丈さを思い知ったぜ。屋根裏さえ侵入出来やしない」





只今無事再会できた戦国組は、先程別れた場所で円陣を組みしゃがんで井戸端会議をしている。しゃがみ方が不良な伊達軍みたいなのはこの際気にしない

佐助は自分の目で見て行ってきた事を話し、自分ではどうにも出来ないと頭を振った。やれやれと溜め息を吐きながらも、心の中では悪態をついていた

いや、他にも入れる場所はあったはあったが、そこは妙な物体がクルクルと高速回転をしていた。これに触ると危ないと察知した佐助はすぐにその場から離れたが、もし触っていたら軽く指が吹っ飛んでいたに違いない(もちろんそれは換気扇





「佐助、ご苦労だった」

「ごめんねー旦那」

「何を言うか。佐助はちゃんと某達の命令を実行したではないか。手が通用しなかっただけだ。気にするな佐助」

「…旦那が、あの旦那が真面目な事を言っている…!?」





幸村の真面目な返答に無茶苦茶驚く佐助を見て政宗と元親は噴出した

何時もなら「気合いだぁぁあ!」と叫ばれていたが、まさかの言葉を聞いて「俺様の苦労は遂に報われるんだ…!」とお日様に向かってガッツポーズをする佐助。もちろん幸村は気付いていない





「んで?どーするんだ。猿が言うには見えない結界がたくさんあるって訳だが…Ha!そういや元親、お前がぶつけてつけたあの血はどうなってんだろうな?」

「!?ば、テメェ!今ここで言うか!?」





ニヤニヤしながら政宗が元親をチラチラ見ると、元親は顔を真っ赤にして掴み掛かった

それを見てここの全員は言っている事が分かったらしく、苦笑したり嘲笑ったり人それぞれ





「え、まさか鬼の旦那もぶつかったの?」

「まさかって…猿、オメェもか?」

「あはー、まさかあんな所に結界があるなんて思わなくて、ついね。つい」

「ついって…忍がそれでいいのかよオイ」





まったくである





「緊張感が足りない鬼と猿め。だからその様な失態を起こすはめになる。場を弁えろ」

「本当だよ。まったく、これだから嫌なんだ」

「お二方。何故視線をそらしたり背を向けておられるので御座るか」




ここぞとばかり口を出す元就と半兵衛だったが、明らかに態度が違いすぎる。二人は口が裂けても自分達も結界にぶつかった仲間とは言えない

いや、絶対に言えない





「…さて、これからどうしようか」





幸村の視線から逃げる様に仕切り出した半兵衛。この際幸村は無視だ

先程から壁にぶつかった話で盛り上がっていた彼らだったが、半兵衛の言葉で真剣な顔に戻り考え出す。…その姿は目に魅くが、今いる格好がアレな為、若干怖い物を感じるがこの際気にしない





「まず君達の意見を聞こうか」

「俺の雷で打ち落とす」

「某の炎で燃やし落とす」

「俺様の闇で引きずり落とす」

「我の日輪で散り落とす」

「俺の炎で焦がし落とす」

「うん、君達に聞いた僕が馬鹿だった」





コイツらに任せちゃいけないと半兵衛は改めて思った

しかも顔がマジで言っているあたり、本気でやりそうで怖い。とゆーかこの世界に彼らが持つ婆娑羅の力が通用するかが問題だ。まぁとりあえずその話は置いておこう

元親は目はマジだが冗談だと笑いながら半兵衛に問い掛けた





「だったらよ、そーゆうオメェだったらどーする?」

「僕の闇で欺き落とす」

「言っている事は一緒じゃねーかよ!!」





何処のどいつも考えている事は一緒だった





「つーかお前の方がたちが悪いな」

「冗談だよ」

「竹中の旦那、気が合うね〜。欺くって言葉は忍にぴったりだからねー。忍にならない?きっと似合っているよ」

「佐助、その様に笑顔で言える台詞なのか…?」

「残念だけど僕は忍よりも軍師の方がやりやすいからね。勧誘だったら別の人に頼みたまえ」

「あらら、残念」

「戯れもそこまでにせよ。もう日輪は真上まで来ておる…このままでは例の女に会わぬ事になるぞ。早々に策を回らせろ」

「…佐助が侵入出来ぬ難関不落なこの城…この時にこそ、武器が必要で御座るのに…」

「致し方ない…あの謎の女に武器を取り上げられている時点で実力行使は封じられた様なものぞ」

「何時もの様に行く訳にはいかないってか。面倒くせぇ。…朝から何も食っちゃいねーから腹が減ってしょうがないぜ」

「あー、それは分かるよ。水も欲しい所だ。…これは早めに会わないとマズいよね」

「Oh…ならこの際正面きって行っちまおうぜ」





政宗の言葉に全員の視線が政宗の方に向く





「と、言うと?」

「多分、竹中や毛利ならもう考えていたかもしれねーがな。出口がないなら、何処かに入口があるはずだ」

「…もしかしてそれって…」

「あぁ、そのもしかしてだ」




政宗はスクッと立ち上がると目の前に広がるデカい屋敷を見ながら、口元に笑みを浮かべながら言った





「玄関に行くぞ」












「おぉ?感心感心。ちゃんと玄関に行く事にしたんだ。よし、そろそろ私の出番かな」


女は呑気に昼飯を作っていた







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