婆沙羅 | ナノ




「さて、あの三人組と別行動をとった僕らだけど一体何処に向かったらいいか。佐助君には侵入の手を打ってもらった。元就君、君はどう考える?」

「此処は未知なる場所。…であっても所詮は我らと同じ日の本。風習も同じであろう。ならば此処は正々堂々正面から参るまでよ」

「反って、佐助君のする事が一大事となるかもしれない」

「その通り」

「なるほど、考えている事は同じだったという事か。流石は中国の智将だ。話が分かっている」

「それを言うならば、貴様こそ同じではないか。豊臣の軍師竹中半兵衛よ」

「そうだったね。話が分かる人は嫌いではない。気があいそうだ元就君」

「フン、言ってくれる」

「それじゃ僕らは正面から行こう。まずは玄関を探そう。話はそれからだ」

「…竹中、この城は警備が手薄のようぞ。見よ、あそこやあちらに戸が開いておる」

「何だって?…本当だ、戸が開いている。もしや佐助君が先回りして開けてくれたのかも知れないね」

「…なら話は早い。早々にあそこから入るとしよう」

「そうだね」




ドベジャ





「ぐはぁあ!?」

「ぐわっ!!?」







第四話
 「残りの者達」







「くっ、我とした事が…不覚を取った。まさか見えざる壁があったとは…」

「本当だね…未来の壁はどうやら発展しているみたいだ。僕とした事が、何も無いと勝手に思い込んだ為こんな事に…」







此処までくるとまたかと思わせる馬鹿っぷりを、軍師に智将である竹中半兵衛と毛利元就がまさかの衝撃的な瞬間を垣間見れた時だった。この二人も、確認する事無く油断して悠々と歩いて中に入ろうとしたその時、二人同時にぶつかり二人同時に呻いた。もし、此処に他にいる仲間が見ていたら爆笑ものである


元就は額を、半兵衛は鼻を擦りながら悪態をつく姿はまさに滑稽だった






「未来は侮りが足しとはまさにこの事よ。…しかし面妖な。結界にしては我らの姿が写し出されている」

「…元就君見たまえ、よく目を凝らせば向こうが見える。どうやら向こうは一つの部屋みたいだ」

「ふむ、この部屋は我らの世界と同じ造りと似ておる。…やはり誰もいないか。これ位広く大きい城ならば中にいてもおかしくない筈」

「物音一つもしない…もしやここの主や備兵達は留守でもしているのかな」

「なるほど。なら話は分かる。しかしいないとなればこちらに問題が生じる」

「そうだね、僕らは一刻も早く紫蝶美莉君に会って話をつけなきゃならない。もし帰って来なければ…この見知らぬ場所で野宿、といった所か」

「我は野宿なぞしたくはない」

「それは僕だって…いや、僕ら全員そうだろう。起きてから食べ物を口に入れてもいないし」

「…これぞまさに、独眼竜が言うぴんちというものか」






窮地に立たつ事は彼らにとってそれは日常茶飯に過ぎない。上に立つ者として、それは逃れられない事であり、大勢の軍を率いる彼らには当たり前の事。戦場で危機に陥る事は何度かあり、それを持ち前の腕と頭脳で乗り越えて来た

彼らが今まで立っていた場所は生と死の境界線

己の力で乗り越えた
己の策で乗り越えた



だが、今回はそうもいかない

此処は未来
平和な未来

あの謎の女が言った通り、自分達の常識は通用しないだろう。実際に実物を見ればそれは然り。見た事の無いものばかりで、何故か何とも言えない気持ちに襲われた。自分達は此処で世界が直るまで暮らせるのか、馴染める事が出来るのか

…最も一番問題点は、どうやって紫蝶美莉と言う人物に説得し納得してもらい、衣食住を提供してくれるか


半兵衛と元就は、幸村と政宗と元親みたいに未来に対する希望を持つ訳もなく、佐助みたいに未来に対する不安を持つ訳もなく、目の前のすべき事にどう対処するべきか。その事を考えていた






「竹中よ、もし無事に紫蝶美莉と接触したとするなら貴様はそいつにどう申すつもりだ?」

「奇遇だね、僕も今君に問おうとした所だよ」

「なら話は早い」

「それじゃ君の問いに答えるけど、僕は様子を見てから考えるのが一番かと思う。元就君は?」

「我も同じ考えぞ。まずは紫蝶美莉という奴を見定め、頭がキレる奴なのか把握して、キレる奴ならば全てを話し、」

「キレずに頭が弱い子ならば適当な話をつけて納得させる。もしくは強制的に納得させるか。…そうだろ?」

「左様」

「…しかし、僕らがそう考えていても残りの彼らがどう動いてしまうのか。特に感情的な幸村君や元親君が問題かな?ま、その時は僕らが何とかすればいい話だけど」

「猿と独眼竜は何かと話が分かる奴等。互いに口裏を合わせれば良い」

「なるほど」







此処はまさに自分の力が問われる時

感情的に流されてはいけない。いかに落ち着いて状況を冷静に分析しどの様に乗り越えていくか






「…留守なら、不本意だが奴等と合流するほか無い」

「同感だ。仕方ない事だけど」







二人は小さく溜め息を吐くと、残りの皆と合流する為に踵を返すのだった













「…ふーん」



二人は気がつかなかった

二人が居た場所の二階にあるベランダに、さっきまでの会話を聞いて居た人物の存在を


「なるほどね、…クスッ、お手並み拝見と致しましょうか」



その者は、笑った





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