婆沙羅 | ナノ


梵天丸は時が来るのを待っていた。稽古、行政、修業など城から縛られる束縛から解放されたい。今日も城を抜け出しあの森に向かって聖蝶の元へと走りたい、とうずうずとしていた。今まで城にいるだけで胸糞悪くなり、殻に籠っていた毎日だったが今となればそんなのは関係なかった。梵天丸の中ではもう城とあっちを完璧に割り切っていて、今まで苦だったこの城がもうどうでもよくなってしまった。自分を忌み嫌う母親も、自分を冷めたで目見る回りの人達も、もう梵天丸の目には写っていなかった





「梵天丸様、最近ご機嫌が宜しい様ですな。何か楽しい事でもありましたか?」





自分の側近であり自分を事を一番に知っている梵天丸がこの城の中で唯一心を開ける人物、片倉小十郎景綱が梵天丸に問い掛ける。今まで逃げていた行政や稽古を最近まるで見違えた様に熱心に勉強に励みだし、病が発症しそのせいて暗かった雰囲気が少し和らいだ事に小十郎は驚く。梵天丸の変わり様に小十郎は純粋に喜んだが一体何が梵天丸を変えたのか、どうも腑に落ちなかった。何となく予想するが、今日は意を決して梵天丸にさり気なく問い掛ければ、笑わず無表情だった梵天丸の顔が少し笑みを浮かべたが、ハッとしてこちらに振り向いた梵天丸にまた驚く小十郎





「…そうゆう風に、見えたのか?」

「はい、気付けばあの森を見ていらっしゃる事が多く…とても楽しそうに、何かを待っているかの様に…」

「………」





大人の前で無表情や感情を表さない梵天丸でも結局は子供で、小十郎はそんな梵天丸を知っていた。いくら梵天丸が何をしていても何を思っていても、小十郎は知り尽くしていると思っていた。しかし今回に限っては梵天丸の思考…いや行動がよく分からなかった





「何か、ありましたか?」

「……」

「…今までの梵天丸様は塞ぎ込んでいて自ら殻に籠っていて人を寄せ付けぬ雰囲気がありました。それは…貴方様御自身がよく知っている事で御座いましょう。いつもの貴方様は外などを見ず、部屋の中に籠られて人を避けておりました。ですが…最近の梵天丸様はまるで人が変わったかの様にお笑いになられる。小十郎めは嬉しく思います」

「………」

「梵天丸様、この小十郎めに貴方様が笑顔に変わられたきっかけを教えて下さるか?差し出がましい事失礼します。ですが私も、貴方様が笑う事を共に私も笑いたいので御座います」





梵天丸を守るのが小十郎の役目。梵天丸が笑う為なら自分は何でもする所存。しかしその逆も然り、梵天丸が悲しみ苦しめるものがあったなら己の手を汚してまで切り捨てるだろう。それ位小十郎は梵天丸を誰よりも大事に思っている

そのことは梵天丸も知っていて小十郎の真の気持ちをも感じていた。だから梵天丸は小十郎には自分を出せれる事が出来た。自分を大事に思ってくれる者がここにいたと、小十郎の言葉で思い出した。身直にいて自分を支えてくれる大事な人を、ちゃんといたではないか。小十郎になら教えてもいいかもしれない、と梵天丸は考えた。梵天丸の頭の中に聖蝶と小十郎の真ん中で楽しそうに笑い合う自分を想像して、口元が緩くなった。願っていた事が、もしかしたら叶うかもしれない。大好きな人達に囲まれて過ごす日々を











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