婆沙羅 | ナノ


幼い頃の自分は一人でいることがとても辛くて寂しくて、とても悲しかった。自分の目が病に侵され、自分の目が目ではなくなってしまった以来から自分は孤独で泣いていた。幼かった頃の自分にとって母親の存在はとても大きくて、その母親が自分の目を見て気持ちが悪いと忌み嫌われて、それを知った時自分に降り懸かったのはほぼ絶望に近い気持ちだった。泣いても泣いても突き放す自分の母、回りの皆は自分に関わろうとはせずまた母親と同じ様に自分を突き放す。いつの間にか、他人を信用出来ずに一人寂しく心のよりどころを探していた。めんどくさい稽古を抜け出して、あの怖い顔をした側近から逃げ出して、城の近くにある広くて暗い暗い森の奥にいつも逃げ込んでいた。城の中にいても自分の居場所なんて何もない。居場所などこの目によって奪われた。あんな場所、自分のいるべき居場所ではない。そう思って森の奥へ逃げていた。側近が自分を探して何度も連れ戻していても、また自分も何度も何度も抜け出して森の奥へ逃げていく

暗い場所は好きかと聞かれたら、前の自分だったら嫌いだと答えた。でも今はその暗闇に向かって走り出す自分は何処か死に場所を探していたのだろう。暗い場所に進めば、自分の居場所が見つかると信じて疑わなかった。小さい身体を懸命に動かせ、走って、走って、転んでもただ懸命に、あの居場所から抜け出す為に、ただひたすら、闇の先にある光を求めていた。あの光に追いつけば自分の居場所が見つかると、信じていた。迷いはなかった。城を抜け出しては闇の中に向かっている毎日をずっと繰り返していた

だから今日も城を抜け出してまたあの森に向かって走り出す。今思えば備兵にとっくに気付かれていたはずなのだが、幼い自分はそんな考えは微塵もなかった。そびえ広がる森の中に入り、暗くなっている闇の中心部に走る。今回はもう少し先を進んでみようか、そんな事を考えていた

しかし恥かしいながらあの頃の自分はとても臆病で、そんな考えを一瞬過ぎったとしてもけして足を踏み出そうとはしなかった。あの先には光がある、だから行かなくちゃと思っていても足は動いてくれなく、その時運が悪く抜け出して来た自分を探しにやってきた側近に見つかり強制的に連れ戻されてしまう。だから今日もここで止まってしまうのか、ギリッと歯ぎしりをたてる。この先に進まなきゃ、見つからないのに、と

泣きそうになりながら、動かない足を懸命に動かしていたその時、自分の耳にある声が聞こえた





「…歌?」





歌が聞こえた
綺麗な、透き通る様な優しい声が


その声を聞いた瞬間、いつの間にか勝手に走り出していた。自分でも驚いていた。動かなかった足が糸も簡単に動いて行けれなかった闇の先に進める事が、出来た事に。聞こえる声は進めば進む程大きくなっていき、そこで自分は確信した。この先に進めば、自分の居場所が見つかる、と





「…まさかこんな所で人と出会えるとは思わなかったよ」




たどり着いたその先には
優しい光に照らされた、それはそれは美しい一人の女の人だった


の奥に見つけたものはそれは優しいでした






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