婆沙羅 | ナノ



「―――梵天丸、強くて優しい武士になって民や仲間を守りなさい。君ならそれが出来るよ。困難が降り懸かろうともけして挫けちゃいけない。前を向いて、龍の様に天へ目指す立派な御仁になりなさい。私は遠い場所、遠い世界で君を見守っているからね。どんなに離れていても私達は心が繋がっているから。もう前みたいに、泣いちゃ駄目だからね」








「つ…!!」






ガバリと起き上がった政宗の上には毛布がかけられていた。いつの間に自分は寝てしまっていたのか。窓から差し込んでいた陽射しは場所をずれていて、空は夕焼けになりつつあった

胸の動悸が収まらない。政宗は片方は胸の服をギュッと掴み、片方は右目を覆った。そうだ、思い出したんだ。なんで今まで忘れてしまっていたんだろう、と。グルグルと政宗の心をかきむしった






「………Shit…!」






アレは夢だったのか?

いや、アレは夢だけど、現実だ


忘れてしまっていた記憶の枷が外れたのだ。何故、どうして、自分は忘れちゃいけない記憶を忘れてしまったんだ


アレは姉上だ。大切な姉上だ。南蛮語を教えてくれたのも、弱かった自分を助けてくれたのも、全部が全部、姉上の存在があったからこそ乗り越えられて、今の自分がいるんだ






「政宗殿、目覚められたで御座るか」

「…幸村」

「今日は天気が良く心地が良い一日。さぞ良い昼寝が出来たで御座ろう」

「…あぁ、そうだな」






部屋にいるのは俺と幸村

他の奴等は別の場所にでもいるんだろう







「……#name#は帰って来たか?」

「左様。先程、#name#殿がご帰宅されたで御座るよ」

「今アイツは何処にいる?」

「戻られてからすぐに部屋に行かれましたからまだ部屋にいるかと」

「Ok、Thank you」







とにかく一度アイツに会おう

話はそれからだ









「―――梵天丸」


「―――政宗」









似過ぎている、あの二人

声も、仕草も、あの香りも










―――#name#、お前は姉上なのか…?











夢であり幻であり

貴方に眠る記憶は真のもの


恐れることはない

安らぎに抱かれた記憶は



今、開花する














期待と不安を胸に、俺は#name#の元へ向かった




end




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -