婆沙羅 | ナノ


フレイリという謎の人物のせいで未来だけど未来じゃない世界に連れて行かれた武将達は只今暇を持て余していた





「…あまりにも平和過ぎるのも、退屈なもんだぜ」





日差しが当たる部屋の窓際で一人ポツンと政宗が呟いた。ポカポカ陽気に当てられ多少睡魔に襲われながらもそれを隠すかの様に呟かれた言葉はすぐに他者の返事で話が膨れ上がった





「そうで御座るか?某は世界は違うが未来が平和になっている事は願ったり叶ったりで御座る」

「本当本当!俺達大歓迎!この世界で忍の仕事しなくてもいいし、平和はいいよねー。俺達ゆっくりと昼寝が出来るしー、警戒むき出しにしなくてもいいしー、いやぁ嬉しい嬉しい」

「天下をとったのは家康君。といっても別人でしかも世界が違う。でも乱世の先がこうした平和だったら、僕もこの平和に賛成かな」

「だがよう、独眼竜の言う事も正しいぜ?平和なこったぁ良い事だがこうも平和過ぎんのも体が鈍っちまうぜ」

「体を動かす事しか能がない鬼め。そう思うなら貴様らは外で鬼事をして戯れていればよかろうに。確かに平和だがそれはこの屋敷の中であろう、外の事を考えた事は無いのか西海の鬼」

「…いや、なんで俺限定なんだよ。そーゆうお前はどうなんだよ」

「我はこの新聞とやらで外の行政など見ている。貴様らより外の事は詳しいと思っておるがな」

「あ?行政なんかてれび見りゃいーじゃねーか」

「#name#の話だとてれびは限られた時間内で大まかな事は放送されないけど新聞は詳しく書いてあるって言っていたから、元就君はそっちがいいかもしれない。僕ももちろん新聞だけどね」

「だがしかし、その新聞には見た事の無い文字があるがその場合どうするつもりで御座るか?」

「南蛮語ならば独眼竜に聞けば問題なかろうに。しかしかたかなという漢字では無いものならば#name#に聞けば問題ない。若虎よ、貴様も忍に聞くのでは無く自分からも新聞を手にして読んでみよ。」

「む…なるほど。精進するで御座る」

「あぁ…!今俺様の目に毛利の旦那が輝いて見える…!!」

「大袈裟だろ」





ここに来た時は何もかも新鮮だった。だがしかし人間三日も経てば目が慣れ環境が慣れ次第に興味が無くなり最終的には飽きてしまう。そして人はまた新たに刺激を求めてしまうのは本能という事である

それは政宗達も同じだったが、皆それぞれここで自分がしたい事や暇つぶしを見つける事が出来た為#name#が留守にしている間自由にしていた。幸村なら庭で鍛練、佐助は家の家事、元就は新聞を閲覧、半兵衛は本を読破中、元親はテレビをポチポチと見ていたり、それぞれ自由に。政宗は料理作ったり幸村の鍛練を手伝ったり色々暇を潰していたが、今日はあまりにも陽気が心地よく、何もする気が起きなかった。自分から持ち出した会話にも参加せずに温かい日差しに身を寄せていた





「(………温かいな)」





こんな風に、日差しに身を寄せたのは何時以来だったのか。覚えていない…が、いや、しかし





「(前にも、こんな風に心地よい感情になったか…?)」





あの乱世

あの城

昔の自分にはこうした安らぐ時など存在しなかった。しかし、どうしてだろうか。頭は全然覚えていないのに、体はとても懐かしいと、懐かしいと感じるのは。温かな陽気に誰かの優しい手が自分の頭を撫で上げる、そんな温かさが。一体この感覚は何だ、何故懐かしくなる、何故恋しくなる、何故あの温かさを今一度求めているんだ





「(…I don't know)」





誰なんだ

優しい手をしているお前は


誰なんだ

俺を温かく包んでくれるお前は








「そう言えば政宗殿は…って」

「ありゃ、竜の旦那もしかして寝ちゃった?」





思い返すのは、あの頃の自分







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