婆沙羅 | ナノ




「俺の事は気軽に元親って呼んでくれよ。俺はアンタを美莉って呼ばせてもらうぜ。俺と竹中とアンタの仲だろ?」

「どんな仲ぞ」

「僕の事も是非とも半兵衛って呼んでもらいたい。勿論、僕も君の事を美莉って呼ばせてもらうよ。あぁ、安心してくれたまえ。君にはちゃんと敬う気持ちをもって呼ばせてもらうから。構わないよね?僕と元親君と君の仲だもんね」

「だからそれどんな仲!?」





「…お二方、嬉しそうで御座るな…」

「…よほどさっきのアレが効いたみてぇだな…」







第十四話
 「平行線未来」







一騒動を沈静させた後、元就と政宗を中心に詳しい話を美莉に聞かせた

自分達は戦国時代から、でもアナザーワールドの世界の過去からやってきたと政宗が言い、気付いたら真っ白い世界に居て、世界を管理する者と名乗る声が自分達をこの世界に飛ばせたと元就が続ける。詳細の話に発展していき、話が一通り終わるまで一時間は掛かった

二人が熱心に話し、他の彼等も真剣な表情で政宗と元就と美莉を見つめる中、美莉もまた真剣な表情で二人の話を聞いていた






「―――…数多の世界を管理する者が、君達の世界に不吉なるモノを感じ取り、調べようとする。けれど君達には不思議な波長を感じる。その波長が調べを邪魔する可能性を考え、この世界に君達を送り込んだ。…自分流に纏めるとこんな感じかな」

「左様。そなたを選んだのは我等の話を一番に理解し、頭がキレる者と見越したのではないかと我は思う。…実際そなたは聡明で頭がキレる。我等の話を親身になって聞いてくれている。…それがなによりの証拠ぞ」

「…頼みの綱は私しかいない、だから君達は紫蝶美莉の私に会いたかったって事ね…」

「That's right.」






今ではもう冷めてしまった紅茶を口に含めながら美莉は全員を見渡す

まっすぐに、逸らされる事がない真剣なまなざしは全て美莉に向けられている。全員、美莉がどう出るのか待っていた。美莉はカップのソーサーにカチャリとソレを置き、小さく息を吐きながら口を繋ぐ






「今の毛利君と伊達君の話…普通の人が聞いていたら信じられない話でしょうね」

「普通の人、なら?」

「そう。普通の人ならね」

「…信じてくれるのか?」

「さっきも言ったけど、自分の戯言が当たっていた以上今更信じられないだなんて言えない。いや、言うつもりは無い。人の確信は簡単には揺るがない」

「…………」

「……今私がする事はその世界の管理者の期待を裏切らせず、君達に安心で安全な未来ライフを送らせる事。君達の世界の為に、ね?」

「…………」

「ま、君達が良ければの話だけどね」






ふわり、と綺麗に笑った







「だって君達には奥さんがいるんだもんね。時が止まってくれているっていっても、奥さんに黙って勝手に知らない土地で知らない女に同居させちゃ色々といけないでしょ?」

「「は!?」」
「な!?」
「「「ブハッ!」」」






色々と口から何かが出た






「?あれ、どうしたの?」

「そ、某にはまだ奥方を娶ってはおりませぬ。今はお館様の為に!我が槍を振るうのみ!そそそそんな中でおおお奥方など…は、破廉恥な…!」

「俺様も。だって戦忍だからねー。旦那の世話で手ぇいっぱい!」

「佐助ぇえ!それはどういう意味だ!?」

「俺も居ねぇぜ。天下取るまで正室は取らねぇって決めてんだ。you see?」

「海賊やってんだ、まだそんな正室娶るとか考えてねぇぜ」

「我はまだ必要ない。今は日輪と中国の安寧の為だけに」

「僕も時間が惜しいからね。安心したまえ、そういった事なら大丈夫だから」

「それに美莉ちゃん、此所は平行線な未来だからこっちの俺様達と俺様達とじゃ色々違うと思うよ」

「あぁ、なるほど。それなら住んでも『浮気者!アンタなんてもう知らないんだから!』って言われて頬叩かれなくて安心だね!」

「え、美莉ちゃん何その現実有り得そうで怖いんだけど」

「え?だって戦国時代は男女の縺れがどーで男尊女卑であーだこーだって」

「いや、そうなんだけど…でも此所は男女平等だって言っていたからあまり関係ないと思うよ…?」

「大丈夫だ。こちらの時代は確かに男尊女卑だけど君に対しては絶対にそうしないと誓うからね」

「いやいや、この世の中男女平等…」






暫く話が盛り上がった







――
――――
――――――







「それじゃ暫く私の家に住むって事で話は住んでもいいかな?うんうん、とりあえず此所の家の案内と君達の服とか色々しなくちゃいけない事だらけだよーやり甲斐があるね!今日は忙しくなりそうだねー」






ほんわかした雰囲気を醸しながら美莉はニコニコ笑いながら皆に言う




美莉がそう言うや否や、全員お互いの顔を見合わせ、スクッとソファーから立ち上がったと思ったら――――絨毯の上に膝を着き、頭を下げだ

突然の土下座に美莉は目を丸くした。何せ目の前には大の大人全員が自分に向かって頭を下げている。しかも彼等本人は立派な名のある武将でもある。ほんわかした雰囲気が一気にストップしたのは置いておこう

ぽかんとする美莉を前に、全員は顔を上げる。嬉しそうな顔、不敵な顔様々に、彼等らしい表情で、言ったのだった








「貴殿、紫蝶美莉殿に出会えた事、光栄に存じますと共に、」

「俺達の話を信じ、また此所に住まわせて貰う事、感謝する」

「アンタが居なきゃ今頃俺様達は未知なる場所で野たれ死んでいたに違いない。その事も踏まえアンタには感謝の言葉も尽きません」

「紫蝶美莉よ、我等はそなたの意向に従い、」

「俺達はアンタに着いていく」

「僕らに出来る事があれば君の役に立ちたい。せめてそれが、微力程度の力でも」


「「「「「「よろしく頼む」」」」」」










「――…伊達藤次郎政宗」

「Yes」

「真田源次郎幸村」

「はっ」

「猿飛佐助」

「はいよ」

「長曽我部宮内少輪元親」

「おう」

「毛利少輪次郎元就」

「……」

「竹中半兵衛重虎」

「あぁ」






「――…こちらこそ、よろしくね」







優しい表情で、美莉は笑った
















「わざわざ土下座する意味は…?」

「A?んなもん俺達なりのケジメだケジメ」

「そうそう。後はノリね、ノリ!………(コソッ)まさか毛利の旦那までノッてくれるとは思わなかったけど」

「……何故か身体が勝手に動き頭を下げねばならぬと思うてな…」





「元親君。これから美莉の為にもこの生活にいち早く馴染んで美莉に尽くそうじゃないか。僕らならやれるさ!」

「おうよ!俺はアンタを誤解していたぜ、中々良い奴だったってな。ダチとして頑張ってやろうじゃねーか、半兵衛!」

「あぁ!銀髪同盟結成だ!」

「楽しそうで御座るな…」








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