婆沙羅 | ナノ




「そうなんだ。紫の彼は長曽我部元親、白の彼は竹中半兵衛…家紋も見せてもらったけど、確かに合致していたよ」

「「…………」」

「………ゴメン、思いの他ショックが大きかったんだね」

「Don't worry.アンタが気にする事じゃねぇ。分からなかったモンはしょうがねぇさ。…が、家紋見て分かるなんて良くやるじゃねぇか」

「「…………」」

「……長曽我部宮内少輪元親。通称鬼若子。又は土佐の出来人。土佐の出来人は土佐の英雄と言われている。家紋は『七つの鳩酢草』、花言葉は『輝く心』。土佐を背負い、英雄と言われていた君の心は熱く立派に輝いているんだね。それは素敵な事だと思うよ」

「………」

「竹中半兵衛重治。戦国時代を代表する軍師としても知られ、豊臣秀吉からの元で参謀として活躍した有名な男。私の目からでも最後まで豊臣秀吉の元で采配を振るっていた姿は称賛に値する。…きっと君はこれからも豊臣秀吉の為に頑張るんだね?応援してるよ、頑張ってね」

「………」




ガシガシッ!!




「アンタ、いい奴だな…!アンタなら俺一生着いて行くぜ!」

「え、」

「僕も君みたいな聡明で博識で美しい御仁なら一生着いて行ってもいい。でも一番は秀吉さ。秀吉、僕が帰るまで待っていてくれ!この世界で仕える主君はそう、君だ!」

「は、」

「Ok.ちょっくらお寝んねtimeと洒落込もうか」








第十三話
 「切れ者」








「皆の名前が分かった所で私も改めて自己紹介させてもらうね。初めまして、私の名前は紫蝶美莉と言います。君達が探す紫蝶美莉とはこの私。そして私はこの家の主でもあります」

「それは誠で御座るか!」

「アンタが紫蝶美莉…Ha!御目当ての御仁がアンタで良かったぜ」

「やはりそうか。そうだとは思っていた。切れ者…まさにそなたの事ぞ」

「何となくそんな予感がしていたけど、良かったーアンタが紫蝶美莉で。これで話が進めるよ」






目の前に座る女があの紫蝶美莉だと知った全員は歓喜し、安堵した

紫蝶美莉、その者こそ自分達が探していた者。唯一自分達の理解者になってくれる大切な存在だ。その者がいて、しかもこうして前にいるなんて。彼らは互いを見合わして意気揚々と笑いあった






「紫蝶美莉!ハハッ、そりゃ良かったぜ!アンタが紫蝶美莉なら尚嬉しいぜ!そうだろ?竹中」

「あぁ!君が紫蝶美莉ならこれ以上の嬉しさは無いよ!秀吉、僕の判断は正しかったよ。紫蝶美莉君、僕ら二人はどんな事があろうと君に着いて行くよ!」

「おうよ!」

「お前らもう黙っとけ」






……だが何故だろう、特に喜んでいる銀髪集団はこの際放って置いた方が良いのだろうか…(政宗と元就の平手が二人の頭に直撃もこの際シカト






「貴殿があの紫蝶美莉殿……っ!は!そういえば先程は誠に申し訳ない事を!」

「え?あぁ…さっきの?」

「先程は誠に申し訳御座いませぬ!あまりの楽しさ故に貴殿に不快な思いをさせ、しかも気絶にまで追い込む事態に…!まっこと申し訳ない!…佐助ぇ!お前も謝らんか!共に土下座をするぞ!今すぐ!政宗殿も毛利殿も長曽我部殿も竹中殿も!」

「いや、あの…そこまでしなくていいから。…武将たる者、私なんかに易々と土下座なんてしちゃ駄目だよ」

「なんと!なんて心優しき御仁なので御座ろうか!無礼を働き処罰を受ける身であろう某達に茶まで提供して下さって、尚も慈悲深きお言葉を頂けるとは…!某、感謝の言葉も尽きませぬ!」






ソファーから退いて絨毯がひいてある上に、幸村は土下座。ガバリと顔を上げる幸村の顔は、そう、お館様を前にする熱くそれでいて感動してまるで犬を連想とする表情だった。と忍は語った

突発的行動は幸村の十八番






「えっと…」

「ごめんねー、びっくりしたでしょ?旦那、ほら席に戻った戻った!美莉ちゃんびっくりしてるでしょー?」

「幸村も相変わらずだな」

「とりあえず話を進めたいから一旦席に戻ってくれるかな?」

「む。では一度戻らせて頂く」

「(…あれ、旦那…女の人前にしても全然騒がないぞ…!?)」





先程アレだけ叫びまくっていたのに、と佐助はしみじみ思う

この至近距離でも「破廉恥でござあああっ!」とか言って逃げていくのに…明日は雨に違いない!と思う佐助は場違い。成長してくれたのかな…!?と淡い期待を寄せる考えも場違いだ。俺様の苦労も遂に…!と思うソレも尚更場違い





「旦那…俺様嬉しくて涙が出ちゃうよ」

「は?」





まぁそんな下りはともかく(ともかく!?俺様にとってかなり重要な下りなんだけど!?

とりあえず幸村が着席したのを見て女…美莉は「さて、」と話を切り出した







「これから早速戯言…いや、話を聞かせて頂きたい」

「Huhu…戯言を訂正した理由は?」

「嘘を吐いている様には見えない。ソレは先程見抜いた事。ただのコスプレ集団じゃない事は分かっていた。私が一番に思ったのは君達の名前を当てて、改めて自己紹介をしてもらった時。…自分の名前を誇らしく言えるのは自分だけでしょ?」

「Ha!!アンタ最高じゃねーか!確かにアンタの言葉に一理あるぜ。で?他にも理由があるんだろ?」

「紫蝶美莉…君達がこの名を呼ぶ声に何処か焦りを感じさせる何かがあった。つまり、だ。紫蝶美莉じゃないといけない理由が君達にはある。…違う?」

「That's right.」






これを聞いて政宗は口笛を吹く

流石は紫蝶美莉、良く読めている

顔を輝かす幸村に、さっすがーと褒める佐助。感心した様に美莉を見る半兵衛と元就と元親に美莉は言葉を続けた







「これはあくまで私の憶測でしかない。それこそ私の戯言と言ってもいい。…私の発言に耳を傾けてみる?」

「是非お願いするよ」

「―――…君達は、過去の戦国時代からこの時代に飛んできた」

「「「「「「!」」」」」」

「過去と言っても…多分違う世界の戦国時代なんだろうね。じゃなきゃ真田君の服とか竹中君の容姿とか長曽我部君の海賊とか当時の戦国時代にその素材は作れない。勿論それは伊達君や毛利君だって同じ。後は真田忍隊と真田十勇士の違い。それに年齢もまばらだからね、この世界過去の偉人ではない事は確実に言える」

「…なんと、そこまで理解しておるとは…」

「落ち着いている様子、冷静に判断して真っ先に私を探すその姿勢……自分達が何故別世界の未来に飛ばされたかは、どうやら知っていると見た。知っていると言う事は…誰かに言われたのかな?この世界に着いたら紫蝶美莉、つまり私に衣食住を提供してもらえ、と」

「まさしくその通り。そこまで気付いているならば我等が申す事は無い。そなたの言う戯言は我等にとっては真実ぞ」

「…俺様、なんだろ安心しちゃって涙が出そうだよ」

「想像以上だな、アンタ。気に入ったぜ!」

「紫蝶殿、某感服致しました!」







切れ者だとは言われたがまさか想像以上に切れ者、まさか殆ど全て該当していた美莉の話に驚き通り越して感謝をしたい

戯言と言っても少なくとも自分達の存在を信じてくれたも同然

しかも相手が紫蝶美莉本人だ。一番知ってもらいたい本人に知ってもらえた。理解してもらえた。彼等は嬉しそうに安堵の息を吐いた







「では、」

「そうだね、君達が良ければ此所に住めばいいよ。部屋はあるし君達を養えるお金はある。快適な未来人ライフを送りませんか?」

「あ、ありがとう御座いますぅうううう!!」

















「俺今の話でアンタに惚れ直したぜ!やっぱ俺アンタに一生着いて行くぜ!」

「ありがとう!本当にありがとう美莉君!君の寛大な心は秀吉に負けないくらい広くて改めて君に着いて行きたいと思ったよ!」

「ちょっと旦那ら嬉しいのは分かるけど美莉ちゃんびっくりしているって」

「…アイツらchara変わったな…」







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