「は、は、は…」 「…Very cute & very beautiful……」 「っ……!」 「…なんと………」 「……へぇ………」 「………うひょー」 「破廉恥でござるぁあああああああッッッッ!!!!!!」 第九話 「こんにちは、未来人」 扉を開け、押し倒され、プチッと潰されてしまった女は、見惚れてしまうくらいの綺麗な女だった 抱き上げた身体は蝶の様に軽く、流れる漆黒の髪は艶があって美しい。閉じられた瞳、きめ細かく日焼けを知らない白い肌、瑞々しい薄い唇、滑らかな肢体。本人は眠っているだけ(いや、正直言えば気絶)なのに儚げな印象を持たせる。雰囲気から歳を想定して約24をいくかいかないか。強く触ればポキッと折れそうだ(プチッと潰してしまったが 一言で言えば彼女は絶世の美女と言っても過言ではない美貌の持ち主だった 「――――…で、どーすんだよこの後はよぉ」 「彼女が目を覚まさない限り次の手に進められないね」 ひとまず自分達の所為で気絶してしまった女を別の場所に安静させようと、家の中に上がり込んだまでは良かった 彼等に待ち受けていたのは未知なる障害物様々だった 大理石で作られた玄関に六つのスリッパ。流石の彼等も此所は玄関だと気付いたものの、この履物は一体何なんだと疑問を浮かばせた。女を見る限り彼女自身も履物(スリッパ)を履いていたからこれは家の中に履くモノだと認識は出来た彼等は、自分の草履を丁寧に揃えて並ばせ、赤、青、緑、紫、白、迷彩の色をしたスリッパに足を入れ、中に入って行った。次に待ち受けていたのは見た事のない上り階段、様々な装飾品、数多くある部屋、上には何かグルグル回っていたり、広過ぎる広間だったり……少なくとも今まで自分達が見た事がないモノばかりが存在していた。大いに彼等を驚かせ、大いに彼等を迷わせた グルグル回って回ってリビングに入り、やっと見つけた和室に安堵した彼等はそこに女を寝かせ、自分達も腰を落ち着かせる事にした。襖があったので開いてみれば掛け布団があったので女にかけてあげるのも忘れない 「にしてもよぉ…色んな物がありすぎて目ぇ回っちまうぜ」 「竜の旦那、アレ何か分かる?」 「…Sorry…悪いが質問は後にしてくれ…チッ、色んな意味で疲れちまったぜ」 「腹が減ったで御座る…此所に井戸はないので御座ろうか…水だけでも欲しい」 「我も疲れたぞ。…しかし未来とやらは不思議な物ばかりがあるのだな…外だけには止どまらず、中までこの変わり様とは…」 「僕も少し疲れたよ…(……まだ血を吐かないだけ十分かな…)」 一気に緊張感が緩んだと同時にどっと疲労感が増し、流石に朝から耐えていた空腹も限界を通り越してしまう 見知った畳みのある部屋だとしても忘れてはならないのは自分の回りは味方とは限らない。敵ではない事は分かっているも、やはり心は身構えてしまう。緊張が揺るまってもまた別の緊張が張り詰める 幸村は眠っている女の横で正座して目覚めを待ち、政宗は反対側で胡座をかいて瞳を閉じている。佐助は幸村の斜め後ろに立ち、元親は政宗の隣りで女の顔を心配そうに覗き込んでいて、元就は陽が差す場所で日輪を仰ぎ(光合成)、半兵衛は幸村の隣りで静かに女を見下ろした もし、この女が紫蝶美莉だったとすれば…自分達は彼女に最悪な印象を与えてしまったのではないか…――― と、全員がそう思い、同時に冷汗を流した その時だった 「――――…んー……」 「「「「「「!!!!」」」」」」 もぞり、と女の身体が動いた 全員一気に女を注視する。形良い眉が潜め、布団から腕が出て頭に触れる。やはり頭を打ったのは間違なかった。全員は女の回りに囲み、女の顔を覗き込んだ 数回布団の中で身体を動かした女は艶やかな薄い唇から吐息を漏らしながら、ゆっくりと閉じていた瞼を開かせた。伏せられた瞼が上がっていき、漆黒の瞳を覗かせた パチリ、と瞳が開かれ、女の瞳と全員の瞳がカチリと噛み合った その瞳は想像通り美しい光を秘めていた―――と全員が思った矢先、女に掛けていた掛け布団が宙を舞った さぁ、眠り姫が目覚められた 「…あー…私とした事があんな事で気絶しちゃっただなんて!」 凛とした声が吐息と共に漏れ、痛そうに頭を擦る しかし女の手には縄が持っていて―――縄の先を辿ればこの場にいた彼等全員が縄に繋がれていたのだった |