グリーンさんから適度な激励を頂いた後、私はオーキド博士に顔を出してシロガネ山の通行許可を頂いた。シロガネ山は一番危険な山だという事で特別な限り誰も踏み入れない様にしていた。いくらバッチがジョウトとカントー揃えても通れないかもしれない。なら、一番偉い人に頼み込めば良い話。という事でジョウトで知り合ったオーキド博士に許可の願いを届け出たけど、理由を問われて正直に答えればオーキド博士はグリーンさんと同じ様に笑った。「おぬしのやりたい様にしなされ」、そう言われた



「だが、無茶はするでないぞ。あそこは人間やポケモン達にとってとても厳しい所じゃ。何があってもおかしくはないからのぅ。山頂は吹雪くし、中は落石など考えられるから、レッドの事は後回しでもちゃんと無事に帰って来るのじゃぞ」



それから私はすぐにシロガネ山にいるレッドさんの元へ、ボーマンダの背に乗って飛び立った。シロガネ山はチャンピオンロードから長い時間をかけて飛んで、そして見つけた。そびえたつ、確かにあの有名なシロガネ山と称されるくらいな程だ、と私は思う。襲ってきた野生のポケモン達は他の野生のポケモン達より強く、戦い甲斐があった。そこら辺にいるトレーナーと戦うよりここにいれば楽しくなりそう、だと思った。そしてハッとした。あのレッドさんも、同じ思いだったのかなと。有り得る話だ、一度高みに足をつけた者はそれ以上を望む。それが、私だった。足りなかった、楽しくなかった。だから私は旅をしている。強い人を求めて。きっと、いや絶対レッドさんもそんな思いだったに違いない



「楽しくなりそう」



バトルをする前からこんなワクワクする気持ちになったのは何時以来だろう。ダイゴさんと戦ったあの日以来すっぽりとそんな気持ちさえ無くなった。でも、今はどうだろうか。ワクワクする、ドキドキする。ポケモン達を見れば私と同じなものだから、声を上げて笑った。ポケモン達も足りなかったから、楽しみなんだね。私は口元に笑みを浮かべた。ポケモン達一匹ずつゆっくり撫でると、私達は暗い洞穴の中へ進み出した





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シロガネ山の中は迷宮複雑で、流石に迷った時もあったが(まさか奥にファイアーがいるなんて予想つかなかった)なんとか無事に山頂まで登る事が出来た。相変わらずポケモン達は強くって、山は厳しいし、段々吹雪いて寒くなってくるし。流石はシロガネ山だなと改めて納得する。山頂まで飛べば良い話だけど生憎うちのボーマンダはドラゴンと飛行のダブルパンチを食らう訳で飛べないし、先程ついうっかり捕まえたファイアーはパソコンに転送されちゃったし、私の体も段々悲鳴をあげてくるし、キュウコンに抱き着いても寒いし、本当にこんな場所にレッドさんはいるのだろうか。…いたらいたでちょっと有り得ない気もするが。本当にいたら私は彼をマジ尊敬する



「おー…着いた」



なんとか着いた、山頂。流石山頂なだけあって見上げた空は真っ白だ。しかも景色が綺麗だ。ここまでくるとポケモン達も足を運ばないのか、一匹もいない。下は普通に吹雪いていたのにここだけはまるで嘘の様に吹雪いていなく、綺麗なダイヤモンドダストが私を迎えていた。…なんて素敵な所なのだろうか。こーゆう景色を見る為に危険を侵してまで見る人の気持ちが分かった気がした。…出来れば分かりたくなかった



「マサラタウンのレッドさーん!いますかー!いたら返事してくださーい!」



ダイヤモンドダストの中を歩きながら私は声を上げる。殆どこの山頂の中を巡っても居なかったから、ここにいるに違いない…いや、居てもらわなくちゃ困る。何の為に来たのか分からなくなるじゃないか。入れ違いだったらマジで泣くぞ

サクサクと進んでいくと、高台があった。その先はもう道といえるモノは何もなかった。高台に立って見た景色はキラキラ光るダイヤモンドダストと、ただ真っ白な世界。ふぅ、と私は息を吐いた



「いなかったか…」



期待はしていた、でも期待はしなかった。ここに立つ場所はもうその先はなく、つまり行き止まり。…レッドさんはいなかった。あの噂は嘘だったのか。でもあれは単なる噂だから信憑性は薄い、期待しない方がいいとマジでそう思った。大きな溜め息しか出てこなかった

レッドさんが居ないなら、私はここにいる理由は何もない。私はレッドさんと戦う為に、グリーンさんと約束を守る為にここに来た。それ以上の理由を求めても何も出ない事は分かっている。とりあえず下山したらグリーンさんに不在だった事を伝えて、一度故郷のホウエンにでも帰宅しようじゃないか。ホウエン地方出身な私にとってこの寒さは死に値する。…本当、よく我慢してきた私。ちくしょう、こたつが欲しいぜ。無いものを欲求する衝動を抑えながら踵を返し、元来た道を帰ろうと進み出す。さっさとこんな寒い場所から抜け出したい、そうぶつぶつ言いながら進んでいくと私の耳に…気のせいだろうか。可愛らしいピカチュウの鳴き声が聞こえた気がした。とうとう寒さで耳でもおかしくなったか?私は立ち止まる。また聞こえたピカチュウの鳴き声。…ピカチュウって、こんな場所を生息地にしていたっけ?そう思いながら私は元居た道を振り返って――固まった



「…え」



私が先程いたあの高台に、赤がいた。真っ白い世界に赤は鮮明に私の目に入った。赤い帽子、赤いジャケット、しかも半袖(えぇぇ!?)、私と同じ位の歳の、燃える様な赤い瞳。その瞳は、私と同じ輝きを灯していた



「…レッドさん」



ピカチュウを肩に乗せた少年、レッドさんは高台の上に立ち、私を見下ろしていた。私の位置と彼の位置はまるであの時のチャンピオン戦と同じだった。無表情で見下ろすレッドさんを見ると、確かにグリーンさんの言う通りだなっと思った



「はじめまして」
「…」
「私はホウエン地方のチャンピオンです。ここの元チャンピオンのレッドさんにバトルを申し込みます」



バトルモードに入った私は腰から一つのボールを取り出す。拒否権?そんなものあるわけない。私は待っていたんだから、この時を。この瞬間を!やっと戦える、あの噂のレッドさんと。ギラギラ燃え上がる私を見下ろすレッドさんも、先程よりもっと瞳は燃え上がっていた。無表情なのはそのままで、レッドさんは一つのボールを取り出した。そして間も置かず私達はキラキラ輝くダイヤモンドダストの中にボールを振り投げた



激しく散り往く閃光



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