少年はレッドと違って表情豊かで、優しそうな雰囲気を持ち、面倒見が良さそうなイメージがある、そんな人だった 突然現れた少年グリーンはレッドの帰宅に怒り驚き、ミリの顔を見て驚き紅潮し感動し、せわしなく表情をコロコロ変えた後、強制的に二人はグリーンの家に連れて込まれる事に。家に上がり「お邪魔します」と言う前にはグリーンに腕を捕まれ、そのまま勢いに引きずられる形でグリーンの部屋へ連行される。あまりの速い展開にポカーンとしているレッドとミリを余所に、グリーンはゼェゼェと息を切らした グリーンの部屋はあまり使用されていないのか、それとも本人がマメに掃除をしているのか結構綺麗に整頓してある。グリーンは素早く座布団を用意して、まだ戸惑うミリを座らせ(レッドは無視)、スイクンとセレビィとミュウツーの居場所を確保させつつもドカッと自分も座った 此所でやっと一息がついた ふぅ、と何拍か置いた後、グリーンはギロッとレッドを睨む様に顔を上げた 「…テメェ、あの時俺をぶっ飛ばしといて連絡も着けずに勝手に行方不明になりやがって。お前、色んな人にどれだけ心配させたか分かってんのか?」 「…ごめん」 「ごめんで済んだらジュンサーはいらねーんだよ!レッド、お前一体何処ほっつき歩いてたんだ!?」 「…シロガネ山」 「…まさかお前、あまりに集中し過ぎて時間を忘れていたなーんて、言わねーよな?」 「…」 「おいテメェ視線反らしてんじゃねーよバレバレだよお前何やってんだよ」 それからレッドに向かって鬱憤を晴らすかの様に怒鳴り散らしたグリーン。一通り気持ちが晴れたのか「もうお前に何言っても変わらねーや」と最後は苦笑いして、レッドの肩に腕を回して「おかえり相棒!」と笑顔でレッドに言った。レッドは口元に笑みを浮かべて「ただいま」と、小さくともはっきりとグリーンに言った その姿を、ミリは微笑ましく視ていた 「――――で、」 グルッとグリーンの視線がミリの方へ向いた 肩に座るセレビィと仲良く目の前の成り行きを静かに見守っていたミリだったが、まさかこっちに振り向いてきた事に驚き、身構える。腕を回されているレッドもいきなりグリーンが顔だけミリに向いた事にギョッとする レッドとミリに緊張が走る グリーンはフルフルと身震いしていくと思えば、迅速な速さでレッドから離れてミリの両手をガシッと掴んだ ミリや肩にいたセレビィは勿論、隣りに座っていた無表情なレッドも、流石に驚いた顔をした グリーンは口を開いた 「光栄です!!」 「は、い!?」 ミリの目の前には目をキラキラさせた、若干キャラが壊れたグリーンの姿 後ろでは唖然としたレッドの姿が 「俺…今絶好調に幸せです!ファンです!俺あなたのファンです!サイン下さい!握手して下さい!」 「(あ、そういう事)…あ、ありがとうございます」 「何でレッドの野郎と一緒にいるのかは後々問詰めるとして。お近付きに俺の事はグリーンと呼んでください!」 「えっと…グリーン、よろしくね。私の事はミリって呼んでね」 何故グリーンがこの様な態度を取ってきたのか――――理由が分かったミリはすぐに対応を切り替えて、グリーンに笑みを浮かべて答える 握ってきたグリーンの手を今度は自分の手で包み返し、それから握手をしてあげる。グリーンの手は優しい温もりがヒシヒシと伝わって、この人は根は優しい人だと改めて分かった。だからこそレッドと長く付き合える事が出来るんだと、ミリはしみじみと感じた 「俺…今なら死ねる気がする」 「じゃあ死ね」 「ちょっとレッド!?」 幸せ絶好調だと言わんばかりに言ったグリーンにレッドは真顔で言い放てばミリはまさかレッドがそんな台詞を言うとは思わず、驚いてレッドを視た レッドは苛々していた 今すぐその繋いである手をカラテチョップで断ち切りたいと思い、途端すぐに実行。グリーンの手首狙って振り下ろせば「いでっ!!」と叫び、グリーンとミリの手はそれぞれ離れた。ミリはもう、ポカーンとしていた 「(彼は…こんなキャラだったか?それともグリーンにだけは毒舌とか…?)」 「何しやがるレッド!せっかく俺が幸せに浸っていた最中に!」 「ムカついたからだ」 「知るか!第一お前なんで行方不明の分際でちゃっかりミリさんといるんだよ!?」 「グリーン、ミリでいいよ〜」 「う…ミリ、といるんだよ///!!レッドの癖に!」 「…ミリ、お前何かしたのか?」 「え、何も?」 「ま、まさかレッド…お前知らないのか!?」 「…何をだ?」 ショックを受けたのか、逆に呆れてしまったのか、グリーンは脱帽してよろよろとレッドに近付く。面白いなぁ、とミリが傍観している最中、グリーンはガシッと今度はレッドの両肩に手を置く 物凄い形相で、レッドに言った 「レッド…今このカントーとジョウトでお前の名前を知らない者はいないと同じ様になぁ、この人もなぁ――――どの地方でも無茶苦茶有名な人なんだぞ!ホウエン地方元チャンピオン!トップコーディネーターであり、ポケモンマスターのあの【盲目の聖蝶姫】なんだぞ!」 「(あ、この世界でもそう言われているんだ)」 「しかもなぁ!この人はお前と同じ伝説にして最強な高嶺の花の様な存在のミリに…お前は何も知らないのか!?」 「…ミリ」 「うん、そうだね」 「…マジで?」 「あはー」 「コイツ本当に知らなかったし!」 この会話をキッカケに、グリーンの語りは続く 「いいか、レッド。よーく聞け。こうしてミリと隣りで並ぶ事態奇跡に近い事なんだぞ!同じ空気を吸っているのもだぞ!風の様に現れて蝶の様に去って行く、誰も掴めない存在なんだぞ!」 「誰も…掴めない…」 「お前後で俺の姉貴に会ってミリの名前を一言言ってみろ。姉貴はそりゃもう喜んでミリの良さや素晴らしさをかたっぱなしから話してくれるぞ。姉貴がポケモンにけづくろいをし始めた理由はミリを見てからなんだぜ」 「…あぁ…だからか」 「才能・賓・美貌を兼ね備えた完璧なミリはそりゃもう有名だ。お前帰ったらテレビつけてみろ。最近はミリの話で持ち切りだぜ。行方不明に近かった【盲目の聖蝶姫】がジョウトに現れてからすぐにな」 「…」 「優しく吹く風に乗ってやってくる蝶、テレビのインタビューに答えた奴等は全員言っていたぜ。ジムリーダー全員だからな。……そうだ思い出した!レッド、ワタル覚えているか?アイツ何処でミリのファンだと嗅ぎ付けたのか、俺のジムにやって来て『俺、あの【盲目の聖蝶姫】と戦った』…な・ん・て!自慢してきやがったんだぜ!?だが安心しろレッド。ワタルでさえ、ミリには敵わなかったらしいからな!」 その口から止まらないグリーンが放つ言葉に、レッドは最初は聞いていたがあまりのマシンガントークで右から左へ流れていく。でもちゃんと話を聞けているレッドに拍手を送ってあげたい ミリに至っては、始めは「自分そんな感じに言われてるんだへぇー」と軽い気持ちで聞いていたが、グリーンの大袈裟に近い台詞を聞き(ミリは全くそんな気はなかったからだ)、段々恥ずかしくなっていき、肩身が狭いと縮こまる。ちょっと自分の行動、反省すべきか…?と一瞬考えをよぎらせる。その気持ちに同調してか後ろではスイクンが紐でミリの頭をパシパシと叩いていた 「ま、レッドがミリと戦っても勝つかどうかは分からねーけどな。むしろ一回負けてしまえ」 「…」 「そう言われましても…」 レッドとミリはお互いに顔を見合わせる。ミリは苦笑を浮かべ、レッドは相変わらずの無表情で 「あの、グリーン…せっかく私をそんな風に言ってくれるのは嬉しいんだけど…」 「…俺達、一度戦ったぞ」 「…なにいいいい!?」 「まぁ、結果は…」 「…引き分けだ」 「ひ、引き分けええ!?」 ガラガラドガシャァァアン! 見えない雷がグリーンの体を突き抜けた そんなグリーンの様子など構わずに「正式な戦いじゃなかったけど、あれは楽しかったね」「…あぁ。そうだな」と過去を振り返り明後日の方向を向いているレッドとミリ。セレビィもうんうんと頷いている。グリーンは驚きを通り越して、サラサラと灰になっていく 「私も最初はレッドがチャンピオンで伝説と言われていた事は出会った当初分からなかったけど、ジョウトを巡っていく最中に色んな人から教えてくれたんだ。『三年前にロケット団を解散させた最強トレーナー』だって。伝説になったのはすぐにシロガネ山に籠って皆に顔を出さなかったせいでそうつけられたんじゃないか、ってね」 「あながち間違ってはいない」 「やっぱり?フフッ、レッドらしいや。でもそんな凄い事して皆に心配かけちゃいけないよ」 サラサラグリーンをほっぽって二人はなんとも甘い雰囲気を醸しながら(グリーン談)イチャつく二人 グリーンは頑張って灰から人間に戻ると、その甘い空気をカラテチョップで断ち切った 「イチャつくなああああ!」 「…」 「あらー」 「レッド!お前ミリに半径三メート以上近付くな!この…羨ましい!」 「(羨ましい!?)」 それから三人は他愛な話をして、楽しい時間を過ごした 基本はよく喋るグリーンに相打ちを打つミリが主に話を進めて、無表情で無口なレッドはちまちま会話に加わる。楽しい一時は時間を忘れさせていく グリーンは―――レッドは行方不明になって再会しても全然変わらないなと逆に呆れ、ミリは画面や写真で見るよりも実際に会ってみるとやっぱり思った通りの人だと感動した ミリはゲームで見るより実際に会って話すとやっぱり第一印象通りに面倒見が良く、優しい人で、面白かった。レッドはグリーンの前ではいつもと同じ無表情だったが、雰囲気がいつもと違って、幼染みの力は凄いなとしみじみ思った レッドは、久々に再会したグリーンには全然変わっていないな、としみじみ感じながら視線はミリの方を向いていた。グリーンはミリの事を沢山知っていた、でも自分は何も知らない。何も、聞いていない。楽しそうにグリーンと会話するミリとの距離が遠くに感じて、レッドは恐怖した 「(こんなにも、近いのに)」 手を伸ばせば届くのに 「(何で…俺は怖がっている)」 今にも消えるんじゃないかと思った瞬間抱き締めたくなった |