「何処のポケモンの世界のマサラタウンは変わらないね。汚れ無き真っ白い始まりの町…私の(仮)故郷であり、レッドの故郷でもある小さな町。んー!セキエイすっぽかして来た甲斐があったよ」 スイクンの背から降り立ったオレンジの服を来た少女が、マサラタウンの入口の前で仁王立ちをする 「分かっていたけど…私の戸籍が無かったのは悲しかったかな…なーんてね」 同じポケモンの世界だが、また別の世界からやってきたミリには当たり前の様に戸籍はない 居場所が無いのは最初っから分かっていた。元いた世界からこの世界の影響はシンオウ地方とホウエン地方のチャンピオンでポケモンマスターくらいしか無く(ポケギアのラジオで放送された時には飲み物を噴出した)分かっていたのに、心にポッカリと穴が開いた気持ちになった まあ元々前の世界でも戸籍なんてなかったから今更か。ミリは自嘲的な笑みを零した 「…分かり切っている事を今さら嘆いてもしょうがない。さっさとレッドの家見つけて、あの子達とバトルをしてあげよう」 ミリは早速レッドの家を探す旅に出た 「すみません、こんにちはー」 「はーい」 * * * * * * 「そんなわけで、レッド。これレッドのお母さんからの贈り物。着替えにー食料にー、これはポケギアでー」 「…セキエイ高原に行くんじゃなかったのか?」 「行って来たよ、ちゃんと。三人と戦って…まぁズタボロにしちゃったけど。そうそう、ゴールドがワタルに勝ったって。もしかしたらその内此所に来るかも知れないね」 「…だからって何で…」 「色々あってマサラに行ったら、丁度訪れた家がレッドの家だったの。レッドのお母さん、すっごく良い人で仲良くなったんだ。お母さん、レッドの事心配していたよ。元気ピンピンて答えといたけど、ちゃんと顔見せなくちゃ」 「…」 運が良かったのか、たまたまだったのか、丁度訪れた家がまさかのレッドの家だったのをいい様に、レッドの友達で今レッドは無事ですと母親に伝えれば心底安心したらしい。家に通してもらい、レッドの話から自然と他愛な話に発展していった。つまり無事仲良くなれたミリはある提案を出せば、母親は快く承諾をしてくれた。それはすぐにでも分かるだろう 「ポケギアがあれば電話が出来るからお母さんに一回は電話してあげてね。これ、説明書」 「…使い方、知らん」 「だから説明書だって」 「使い方」 「…素直に教えてと言えば済むものを」 まるで大きな子供を持ったお母さんの気分、なんていう複雑な気持ちなんだろうと思いつつもレッドに教えている辺りもうお母さんでもいいかもしれないと思ってしまう 「これがラジオね」 「必要ないな」 「オーキド博士のポケモン講座は?」 「…つまらん」 「オーキド博士が聞いたら泣いちゃうね、絶対」 「これは?」 「タウンマップ、で、こっちが電話ね」 「…?誰のだこの番号は」 「ん?あぁ、きっとレッドのお母さんじゃない?」 「…一つだけか。お前のは?」 「私の?登録してもいいの?」 「あぁ」 「了解。登録は…刹那ちゃーん!かもーん!」 「…」 元々要領が良かったのか、一回教えただけで結構使える様になったレッドにミリは感心した。ポケギアの存在自体知らなかった事には想定内だったからあまり驚かなかったが、ポケモンに対する執着と集中を別の所に向ければ凄い事になるな、とミリは思う。これならレッドも母親に電話をするだろう、と思うがどうせ面倒か邪魔だと連絡をしないのだろう…簡単に想像が出来た 実際に目の前でポケギアをバックの中にしまっちゃっているレッドの姿を見てしまうと、もう溜め息しか出てこない 「レッド…ポケギアは携帯してこそのポケギアなんだよ?分かってる?」 「邪魔だ」 「コラ」 「寝る」 「…これはもう、強行突破といった方がいいのかもしれないね」 「…?」 ボソッと呟かれた言葉に、レッドは頭を傾げる。が、まいっかといつもの様にミリの太股に頭を乗せた 太股に頭を乗せる反動で一瞬ミリの顔が覗いたが、ミリの顔はニヤリと…何かを企んでいるだろう笑みでレッドを見下ろしていた(目が見えないのに、まるで自分を見抜いていて 流石にレッドも何かを察知したらしい ガバッと起き上がろうとしたが、ミリの方が行動が速かった 「な…、」 「蒼華と時杜と切な以外今の内にボールに戻って!」 「…!?」 起き上がろうとしたレッドを覆い被さる様にミリはレッドの身動きを封じる。レッドの目の前にはミリの長い髪の毛とオレンジの服と豊満な胸…覆い被さる事でレッドの顔には必然的にミリの胸が当たる訳で、困惑と羞恥で固まってしまったレッド 動かない事を理由にミリは的確にポケモン達に指示を出す。ポケモン達はまるで打ち合わせしたかの様にどんどんボールの中に戻っていき、セレビィのねんりきによってボールはそれぞれのバックの中へ移られる ミリは満足げに微笑み、固まっているレッドの体をガシッと掴み、それを見てもミュウツーもガシッと掴めばいくらレッドも動くにも動けない レッドと目を合わせる様に顔を近付けたミリ。だがしかし目線は合わないのがもどかしい。ちなみにその距離数センチぎりぎり。若干危ない 困惑しつつも無表情なレッドに、ミリは口を開いた 「今からマサラタウン帰宅ツアーにご案内〜。行き先は勿論、レッドの家!」 「…っ!」 「刹那、テレポート!」 ミュウツーに指示をすれば、ミュウツーの目が光った瞬間にもうシロガネ山の入口に移動される。何時用意されたか分からない大きなバスケットにミュウツーはレッドを放り投げると、自身も中に入りレッドを抑える レッドは茫然としていた 「刹那はバスケットを!蒼華は私を運んで、いざしゅっぱーつ!」 バスケットの中から見えたミリの顔は、とても清々しい笑顔だった 強行突破はお手のもの! |