ブルーは走っていた レッドも走っていた グリーンは二人を追いかけていた 「早朝からお前らは…!一体何処に向かっているんだ!」 「グリーンは家に戻ってもいいんだぜ!」 「フン!俺はお前らが変な事をしないか見張るだけだ」 黙々と走るブルーを先頭に続く様に、レッド、グリーンと後ろを並ぶ 早朝のマサラタウンは空気が綺麗だった。空は青く、カラッとした良い天気だ。三人はオーキド博士の研究所を飛び出して町中を抜け、マサラの外れまで走り続ける 事の始まりは、こうだった オーキド博士の研究所で泊まっていた三人は、リビングで顔を合わせようと先に起き出したレッドとグリーンが朝リビングでブルーを待っていた。しかし、一向にブルーが来る気配はない。寝坊だろう、とグリーンが呟いたその時ブルーがやっと姿を見せた。…しかし、ブルーの様子が違っていた。困惑していて、泣きそうな顔で…。でも、すぐにブルーは真剣な顔に戻すと飛び出す様にその場を駆け出した。呼び止めるグリーンを置いてブルーはそのまま研究所を飛び出してしまう。瞬時にレッドも悟ったのか、すぐに後を追って研究所を抜け出し、グリーンも何かあると思い結局二人の後を追った 「あら?三人は何処に行ったのかしら」 久々に帰って来ていたナナミの呟きがあったなんて、きっと知らないだろう 「…あったわ!」 今まで黙々と走り続けていたブルーが、息を切らせながら歓喜の声を上げ足を止める。レッドとグリーンは同じく息を切らせながらブルーの隣りに並んだ そこは一軒家だった 普通の家だ。何の変哲のない、ただの家。玄関は綺麗な花で飾られている綺麗な家だが、ただそれだけだ。しかしこんな所に家があったなんて、レッドとグリーンは驚きを隠せない 「ここは…?」 「此所は昔…ミリお姉様が暮らしていた家よ」 「「!」」 「…良かった、まだ家は残っていたのね…」 ブルーはホッと息を吐きながら、拳をキュッと握り締める。心の準備が出来たのかブルーは顔を上げ、未だミリの家を眺めている二人を置いて玄関に向かう。そして後から慌てて追いかけるレッドとグリーン← 玄関に着いたブルーは家を見上げた。久し振りに、何十年振りに見た家は昔と変わらずに存在していた。それが嬉しくて、涙が出そうだ 「どうやら家に人がいるみたいだな」 「ミリがいたりしてな」 グリーンの言葉にワクワクしながらレッドは言う。確かにグリーンの言う通り、ガスが動いているし、中に人がいる形跡があった。明かりが点いているのをみると、居ておかしくはない ブルーは腕を伸ばし、インターホンのボタンをゆっくりと押した ピーンポーン… インターホンの音が、嫌に響く ドキドキと心拍数を上げる心臓 待っていると、中から人の足音が聞こえて来た。音は目の前に来て、一度止まる。靴でも履いているのだろうか。それからまた足音が動きだし、ガチャガチャっと鍵を開ける音が聞こえた そしてガチャッ…とゆっくりとドアが開かれ、三人は中に居る人物を見た 流れる漆黒の髪を靡かせた、見知った顔。料理をしていたのかエプロン姿のまま現れた人物は――紛れもない、ミリ本人だった 「はーい、…アレ?誰かと思ったらレッドにグリーン!久し振りだね!」 「久し振りだな!」 「数日振りだな、ミリ」 「あはは、そうだったね。…ん?この子は…?」 「っ…お姉様…」 「え、その声は…」 「お姉様!!」 ブルーは目にいっぱい涙を溢れさせたまま、腕を広げてミリに抱き着いた。昔みたいに抱き着いた様に、ブルーは久し振りに感じた温もりに、声を上げずに泣く 抱き締められた張本人であるミリは、一体全体どうなってんだとブルーをマジマジと見るが、ゆっくりとブルーを抱き締め返した。そして腕を伸ばし、優しくブルーの頭を撫でてあげる。――そう、昔の様に 「こんなに、大きくなったんだね」 「お姉様…ごめんなさい。大っ嫌いだなんて言ってごめんなさい。あんなこと言って、本当にごめんなさい…!」 「ううん、貴女が謝る事じゃないよ。それは私にも言える事だから」 「そんなこと、ない…!」 「フフッ、こんなに泣いたら可愛い顔が台無しだよ おかえりなさい、ブルー」 あの時の様に、笑った → |