チャンピオンを守る壁であり

行く手を阻む、四人の強者












Jewel.44













全ての頂点に君臨するのがチャンピオンだとすれば、チャンピオンを守る存在がいるのもまた然り

此処、ホウエン地方にもそういう存在が確かに存在していて、チャンピオンを守る為にリーグに挑戦してくる挑戦者を容赦無く地へと伏せさせる。彼等に破れた者は数知れず、夢を掲げてリーグに挑戦するも大概のトレーナーは頂点に辿り着けず涙を惜しむ事となる

――――…チャンピオンが光と例えるなら、彼等は光から生まれた影と言うべきか

人は、リーグは、その実力を認めて彼等をこう呼んだ




チャンピオンを守る屈強の壁

ホウエン四天王と――――








「おはようございます、我等がチャンピオン。クスッ、今日も一段と美しく眩しいですね、ミリさん」

「やっほーミリちゃーん!おっはよー!」

「ミリさん、ご機嫌様。朝も早くの出勤、そして予算会議お疲れ様ですね」

「朝からよくやるのぉ」

「!皆、」







前任チャンピオンが残した仕事を短い時間ながらも少しでも多く片を付け(といってもまだ四分の一しか終わらせられなかった)、次にある予算会議に出席し、上層部の方々を含めた各部署の部長さん達と一緒に小一時間程度の会議を先程無事に終わらせた帰り道

会議が終わってお昼を済ませたら次にあるのはミナモシティで公開試合、時杜の力があれば一瞬だけど他の人がいるとソレが出来なくなっちゃうからなぁ、時間ギリギリまで仕事片付けるのは無理かなぁー…――――と、今日のスケジュールと残っている仕事の量の進み具合を考えながら廊下を歩いて部屋に向かっている時に、前方に四人の人間が私達の前に現れる

彼等こそは、此処のホウエン支部のを守る強大な壁

ホウエン四天王と、人は呼んだ







「おはようございます、ロイド、ミレイ、プリム、ゲンジ。四人揃ってこれからどちらに?」

「腕慣らしに少しバトルフィールドを借りてバトルをしようと思いまして」

「ついさっき許可が降りたからゲンジさんとプリムさんも誘って一緒に向かっている所なのよね!」

「ミリさん、貴女もどうかしら…―――って、言いたいところですが、」

「…お主には本当に申し訳なく思う。あの馬鹿たれがちゃんと最後まで仕事を終わらせておればこうなる事は無かったのにのう」

「あぁ…その事ですか、」








ロイド、彼は四天王第二の関門で悪タイプの使い手。黒髪を短く爽やかに妖しく光る紅い瞳、全身黒いコートに身を包んだ少しミステリアスな印象を持つ男性

ミレイ、彼女は四天王第一の関門で草タイプの使い手。ふんわりと弾ませる柔らかい黄色の髪に透き通った常磐色の瞳、一件落ち着いた印象を与えるも実は今ドキの女の子みたいな活発で元気な女性

プリム、彼女は四天王第三の関門で氷タイプの使い手。言わずと知れた彼女こそ、見た目からも口調からもお嬢様出身な、凍て付くその碧の瞳の奥は温かい光を宿す優美な女性

ゲンジ、彼は四天王第四最終関門で竜タイプの使い手。プリムと同様に言わずと知れた彼は厳格な風格と動じない強き精神を持った逞しく凛々しい男性

彼等は得意とするタイプを専門に長年このホウエンリーグを支え、前任チャンピオンの四天王として活躍してきた

リーグ大会を終え、前任チャンピオンが辞職し、新しく私がチャンピオンになった事によって、今度はこの私である新任チャンピオンの四天王として腕を奮う事になる。彼等とは残念ながらリーグ大会では四天王戦をやらずにチャンピオン戦一本で行った為に実力はまだ未知数だけど(どうやらシンオウとはリーグ大会の形式が違うみたい)、四天王と呼ばれ、それに因んだ異名や彼等のボールから感じるオーラを感じれば彼等がどんなトレーナーなのかは簡単に想像が付く


彼等には、アスランさん達共々、就任してから随分とお世話になっていた


当たり前だけど、四天王といえど私にとって彼等は大先輩だ。仕事の内容は違ってくるし、責任感も違ってくるけど、彼等から学べる事は多い

彼等との出会いはチャンピオンマントの受け取ったあの日。チャンピオンマントを受け取って、四天王紹介の時に対面する機会が訪れる。彼等はこんな盲目の私を温かく迎えてくれた。就任したばかりで、アスランさん以外頼る人がいなく、右も左も分からない私を率先して色々と指導を頂いたり(道案内とかね)、何かしらこうして声を掛けてくれたり、気を遣ってもらったりと、本当にお世話になりっぱなしで







「気にしないで、これもチャンピオンの責務だから。仕事は仕事でしっかり片付けるつもり。貴方が気を病む事じゃないよ」

「……流石はチャンピオンじゃな。その心構えは立派なものじゃ」

「ですが、無理は禁物ですからね。チャンピオンが仕事の量に押し潰されて体調を崩しただなんて笑い事にもなりませんから」

「私達が手伝える事があれば、何でも言って下さいね?」

「そうそう!」

「…―――ありがとう、皆」

「…」
「キュー」
「……」
「………」







こうして彼等は私に気にかけてくれるのだ。やはり四天王としての誇りは高く、チャンピオンをサポートする意味では彼等は進んで行動に移そうとする。随分出来た四天王だと関心したいところ

その気持ちは有り難いものだけど、だからといって彼等に甘える事は許されない。たとえ残された仕事だとしても、仕事は仕事と割り切っている。与えられた責務として、ただ真っ当に片付けるだけだ

やっぱりプライドが許さないのもあるからね。中々妥協が出来ないっていうか。そうやってどんどん溜め込んでいくのも私の悪い癖で、溜め込み過ぎて爆発しちゃうのも私の悪い癖なんだよねあはー(ええええ)とりあえずそうならないように頑張るつもりではいる。つもりで←







「――――…こんな眼でも、私にも出来る事はあるしね。今はあの仕事を片付ける事に徹底するよ。この子達もお仕事を手伝ってくれるから、すぐにでも終わりそうだよ」

「キュー!」
「……」

「よしよし」

「うーん、ミリちゃんって真面目だよね〜。あの人に是非とも爪の垢煎じて呑ませてあげたい」

「確かにのう」

「皆は皆にしか出来ない事を頑張って。皆には、四天王として色々活躍してもらわないと、ね」

「えぇ、勿論ですよ」

「けして、貴女の顔に泥を塗る様な事にはさせませんよ」







四天王はホウエン地方だけに存在しているわけじゃない。シンオウにもちゃんと四天王は存在している。勿論、チャンピオンであるシロナにも四天王が付いている事になるんだけど、あちらは一体どんな人がシロナに付いているんだろう。まだ連絡取れる暇がないから、今度連絡したら聞いてみよっかな

そしていつか、シロナ達に皆の事を紹介したいな。きっと仲良くなってくれるはず。少しずつでもいいから、冷戦だなんて馬鹿げた意地の張り合いなんて止めて、お互いが助け合える良い友好関係になれたら、理想的だよね…――――







「フフッ、それじゃ私はそろそろ行くね。バトル、私達の分まで楽しんできてね」

「…」
「キュー!」
「……」
「………」

「「「「我等がチャンピオン、貴女の御心のままに」」」」










その台詞は絶対に言わなくちゃいけないものなのだろうか。しかも四人揃って綺麗にハモって…

皆が胸に手を当てて頭を垂れながら見送られる中、相変わらずこういうのは慣れないなぁと苦笑を浮かべるしかない私だった







(そんな彼等も私の自慢の四天王)


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