とりあえずミナキさんを見えなくなるまで見送った私達は、近くの木陰で腰を下ろす事になった。丁度お昼時だったので、エリカから作って貰ったサンドイッチをレンに一緒に食べようと提供。皆にもご飯をと白亜と黒恋を出してやれば、レンも習ってボールからポケモンを出す。久々に出会ったのが嬉しかったのかすぐに輪の中に入って行った二匹に笑いながら皆のご飯を用意してあげる





「なんか悪いな」

「全然!」





ポケモンフード、ポロックやポフィンを取り出せば、わらわらとやってくるポケモン達(レンの手持ちもわらわらと)に均等に食べれる様に提供すれば、皆仲良く美味しそうに堪能。「食べ終えたらこちらが言うまで自由」と言えば皆嬉しそうに返事を返した(仲良くなったなぁ、本当

一息着いた私はレンの隣りで腰を降ろす。エリカから貰ったサンドイッチを一個食べ終えると、レンは言った






「さっきと比べて顔色はマシになったな。だが、悪いのは変わりないな」

「…そんなに、悪く見える?」

「他人が見れば普通、だな」

「……」





確かに負のオーラが強過ぎて気分は優れなかった。だからって顔には出したつもりはなかったのに…今でも気分は悪いのは変わりない

…気をつけないと、ね

本当、レンの洞察力には完敗。ポケモンにだけじゃなくてこの私にまで見抜くなんて





「本当、レンって凄いね」





…表情を隠すのは、慣れているのに

















それからしばらくサンドイッチをレンと仲良くもしゃもしゃと食べて、食べ終えて少し食休みをして、本題に入る事になった(背景には皆楽しそうに追いかけっこをする姿が)(あぁ、平和だね)

私はバックから茶封筒を取り出すと、レンに差し出した





「昨日言った資料。あの子達の事と、ナズナの事について書かれている。少しでもレンの為になるなら」

「あぁ、サンキュー。…今ここで読んでも良いか?」

「構わないよ。どうぞ」






レンは私から茶封筒を受け取り、中味を開ける。封筒から出てきた資料の束を手に取って、一枚ずつ目を通していく

段々真剣な目の色に変わっていく、レンの瞳。一枚ずつめくっていくたび、眉間に皺が寄ったり寄らなかったり様々だ。何せレンも一度マチスから受け取った写真を見てしまっているから





「…そうか、だから電話であんな事を…」

「え?」

「これ、一人で読んだのか?」





目線は資料に向けたまま、いきなりレンは口を開いた

私は一瞬戸惑ってしまったが、レンから視線を逸らし、ゆっくりと頷く





「…読んだよ。一字一句漏らさず、貰った資料全てのページを」

「……」

「たった一枚の紙、淡々と記されているだけ。それなのに実際は酷い実験…客観的に見る分には何も知らないから、スラスラ見れる。…けど、あの子達の傷を知り、マチスから受け取った写真を見てしまったから、割り切れる事が難しかったかな」

「…」

「きっとこれはあの子達だけじゃない…あの子達にだけに、限らないんだ」






向こうで仲良く遊んでいる皆を見つめながら、静かに私は呟く

そう、レッドが持っているブイやギャラだってそうだ。あの二匹もロケット団の実験台に使われて、他にも沢山のポケモンが実験に扱われた。心の傷はかなり酷いものだろう

白亜と黒恋は酷い心の傷を受けても果敢に立ち向かい、ここまで成長出来た。そのお蔭で、人間はまだ無理があるけどポケモン同士ならあの様に仲良くなれる事が出来た

かなりの進歩だ、そう思うと嬉しくてつい口元に笑みを浮かべる







「ミリ」

「ん?何レ――」








グッ――












「(……、え?)」






レンの腕がいきなり伸び、振り向いた私の肩を抱く。言葉が止まった私を、凄い力で引き寄せる。一瞬何が起きたんだとポカンとなる私。超至近距離にはレンの顔があって、私はレンに抱き寄せられたと数秒遅れで気付いた



…あのハピナスとトゲキッス、何食わぬ顔で白亜と黒恋の目を塞いだぞ。あー、可愛いなぁ。エルレイドが二匹を持ち上げて…あぁ、皆してどっかに行きますか。蒼華やスイクンまで…仲が良くなって私は嬉しい…Σってちょおおおい!?もしもし皆さぁあああん!?(ポケモンは空気を読めていた

恥ずかしさと驚きで固まって何も言えない私を、肩を抱いていた手を伸ばして頭をくしゃりと撫でる。――やっぱりその手は優しくて、懐かしくて――困惑気味にレンを見上げる


レンの顔は、真剣だった







「…これからは情報が見つけ次第、すぐこっちに連絡を入れろ。情報を聞いた後じゃなくて、情報を聞く前に」

「あわ…?」

「いいな」

「……う、ん」





レンの口調は有無を言わせないものがあって、私は戸惑いながらも頷くしかなかった





「それからこの資料、俺が預かる。ナズナの資料もあるし――まだ、その方がいいだろう」

「…そう、だね」






私はレンの瞳から視線を逸らし、レンの肩に頭を乗せる(この際羞恥通り越して役得だと考えてやる←

それからレンの腕が伸びて、今度は私の手を掴んだ。ギュッと、それでも優しく掴んだレンの手に、驚いてまたレンを見上げる

今度は真剣な顔ではなく、優しい微笑を浮かべていた







「よく、頑張ったな」

「……!」



「大丈夫だ――もう、お前をそんな思いにはさせない。これからは…」









「大丈夫です――もう、貴女をそんな思いにはさせません。これからは…俺がいます。貴女のお側に、ずっと…」











「…っ」

「レン…?」

「…いや、なんでもない」







レンは笑う

しかし、私にはその笑みがちょっと引っ掛かるものがあった。…けど、私は知らない振りをした

何かある、そう思いながら












「しかし、役得だな」

「…ちょっとレン、ニヤニヤしてムードぶち壊しじゃないの」

「お前こそニヤニヤしていたら人の事言えないだろ」

「へぇー?ならお望み通り、役得として堪能させて貰うけどね〜。銀髪サラサラ長いね〜綺麗な髪の毛」

「よーし、ならこっちも堪能させて貰うぜ。…こうして見るとお前髪、サラサラしていて綺麗だな」

「え、お揃い?」

「みたいだな」

「「はははっ!」」









ポケモン達が木陰で見守っていた






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